日本は「失われた30年」と言われて久しい。それは、スポーツの世界でも同じだと言えるだろう。

 例えば、20〜30年前はMLBもNPBも一球団当たりの売上高は似たようなレベルだった。ところが、MLBでは、この20年間で売上高が5〜6倍に増えたと聞く。一方、NPBはと言えば、僅か10パーセント程度の増加に留まっている。

 この差がどこから生まれてしまったのか。もちろん、経済全体の成長率が違うというバックグラウンドも大きい。けれど、それ以上に僕が問題視したいのは、リーグとして「ビジネス」に取り組もうという姿勢が、日本ではあまりに希薄だということだ。NPBでは楽天イーグルス、Jリーグではヴィッセル神戸を運営し、スポーツビジネスに携わる中でそのことを痛感している。

 この問題を考える時、真っ先に頭に浮かぶのは、アメリカンフットボールのリーグ、NFLだ。

 NFLは世界で最も成功しているプロスポーツリーグだが、その人気を下支えしているのが、リーグ全体の発展を意識した分配制度の確立だと思う。例えば、NFLでは、各試合のチケット収入の40パーセントがリーグの売上となり、全チームに分配される仕組みがある。

 これが、Jリーグの場合はどうか。ヴィッセル神戸のイニエスタは世界的なスター選手だ。神戸のスタジアムはもちろん、アウェイでの試合であっても、彼を見るために大勢のファンが詰めかける。ところが、たとえ相手チームのスタジアムを満員にしても、ヴィッセル側には一銭も入らない。これでは、何十億円という資金を投じて、海外のトップ選手をクラブに招くというインセンティブが働きにくいのではないか。

決定権がないオーナー会議

 もちろん、プロスポーツのリーグ戦では、各チームは勝敗を争うライバルだろう。けれど、NFLのオーナーたちと話していると、彼らの認識は日本のそれとはかなり違う。

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source : 週刊文春 2022年7月7日号