2013年11月3日、東北楽天ゴールデンイーグルスの仙台の本拠地で日本シリーズの最終戦が行われた日のことだ。それまでの戦績は3勝3敗。日本一をかけた読売ジャイアンツとの試合を、僕はスタジアムの「管理人室」で観ていた。
普段は秘書やスタッフが近くにいたりみんなで観戦することもあるけれど、この日ばかりは一人で静かにじっくりと試合を観たかった。
「今日はここで一人にして欲しい」
周囲のスタッフにそう言って、僕は机と3、4脚の椅子があるだけの管理人室に残って、モニターに映し出される試合に見入っていた。
最終回、3点リードで迎えた9回表。当時の星野仙一監督がリリーフに出したのは、第6戦で9回まで投げ切っていた田中将大投手だ。会場に湧き上がる歓声が管理人室にも響き渡ってくるようだった。
球団設立当初は最下位が続き、Aクラスに入ったのは2009年の1度だけ。2011年には東日本大震災も経験した。苦しい時代も長かった。個人的な話をすれば、ちょうど父・三木谷良一が末期がんで入院していた時期でもあり、胸には様々な思いが去来していた。
だから、田中投手が最後のバッターを三振に抑えて日本一が決まった時は感無量だった。
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source : 週刊文春 2022年7月14日号