5月24日、アメリカ南部テキサス州の小学校で児童ら21人が亡くなる凄惨な銃乱射事件が起きた。NBAゴールデンステート・ウォリアーズのスティーブ・カーヘッドコーチはこの日、試合前のインタビューでこんな言葉を口にしていた。
「今日はバスケットの話はしない。そんな話はどうでもいいんだ」
ゴールデンステート・ウォリアーズは今シーズン、NBAファイナルで優勝したチーム。ただ、3年前は最下位だった。そこからチームを復活させたスティーブの発言は、スポーツの枠を超えてアメリカ全土に伝播する力を持っていた。アメリカにおいて人気プロスポーツチームのリーダーが、社会におけるインフルエンサーとして存在感を持っていることを改めて見せつけられた思いがある。
そんな影響力を持つリーダーは日本にもいた。今回は、僕が球団経営の中で出会った「名将」たちのことを綴ってみたい。彼らもまた、カーヘッドコーチのように、スポーツの世界のみならず、ビジネスや社会にまで大きなインパクトを与えるような人たちだった。
中でも特筆すべきは、野村克也監督と星野仙一監督である。
幼い頃から一日の大半を練習に費やしてきた野球選手は、野球以外の世界をきちんと学ぶ機会がどうしても少なくなるものだ。だけど、お二人はそうした「野球だけの人」ではなかった。
野村さんから教わった哲学
2006年からチームを率いてくれた野村さんは阪神タイガースの監督を退いた後は一度プロ野球の世界から離れ、社会人野球の監督などを務めていた。
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source : 週刊文春 2022年7月21日号