オールウェイズ、エキゾティクス。ジュリーの80年代をバックで支えたのは、彼より少し年若いミュージシャンだった。進化する音楽と並走するバンドの日々。

写真=横木安良夫

 1970年代最後の秋が深まった頃、現在ヒカリエが建つ場所にあった渋谷の東急文化会館には、沢田研二の新しいアルバム「TOKIO」のでっかい垂れ幕が掛かっていた。宇宙遊泳するジュリーをイラスト風にコラージュした、早川タケジ制作のジャケットをそのままでっかくしたポスターだ。

 通りがかりにそれを目にしたのが、後にジュリーのバンドのリーダーとなり、89年からはプロデューサーを務めた吉田建である。まだ30歳だった吉田は「カッコいいなぁ。いつかああいうキラキラした世界でもやってみたいな」と心躍らせ、広告を眺めていた。

 早稲田大学卒業後にプロの道へ進み、70年代半ばから浅川マキ、泉谷しげる、中島みゆき、大瀧詠一らと仕事をしてきたベーシストは、陣営を分けるとニューミュージックの世界の住人だった。歌謡界とニューミュージック界が少しずつ溶け合っていく時期ではあったけれど、吉田には華やかな芸能界はまだ遠くにあった。そんな矢先、泉谷のマネージャーからある情報がもたらされる。

「今度、井上堯之バンドが解散するらしいよ。それで、ジュリーのバンドのオーディションがあるようだ」

 49年生まれの吉田にとって、ひとつ年上のジュリーは高校生の頃からテレビで見ていた輝くポップスターだった。彼が好きだというローリング・ストーンズの「ブラウン・シュガー」を予習して、表参道のハナエ・モリビルの裏にあった渡辺プロの東京音楽学院へ出向いた。数十人のミュージシャンが来ており、名前を呼ばれてオーディション会場へ入ってみると、ドラムとギターとキーボードがいて、「これ、弾いて」と、「勝手にしやがれ」の楽譜を渡されたのである。

 72歳の吉田が、笑いながら42年前を思い返した。

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source : 週刊文春 2022年8月11日号