日本のジャーナリズムについて考えていると、日本が陥っている「心地よい衰退」の原因の一つには大手メディアの姿勢があるのではないか、と思うことがある。
例えば、いま、日本は急激な円安によって、わずか数カ月間のうちに円の価値が3分の2になってしまった。この「日本売り」の背景にあるのは、一義的には言うまでもなくアメリカの金利が上昇したことである。
だが、日本の要因も大きい。日銀が金利を上げられないのは知っての通り、国債のバラマキで国の借金が膨大なものとなり、0.5パーセントや1パーセントの利上げですら影響が大きすぎるからだ。
本来であれば、中央銀行と財務省はそれぞれ独立した立場で政策を行い、「チェック&バランス」を効かせなければならない。ところが財務省は金をばらまき続け、日銀は金利をなかなか上げないので円安は進むばかり。日銀の総裁は来年春に交代するようだが、それまでゼロ金利政策を続けてしまうのではないだろうか。
ゼロ金利の日本と3.5パーセントの金利が付く米国債であれば、誰がどう考えても後者を買い進める。シンプルな理屈だ。円安は10月15日には1ドル=148円台後半にまで進行したが、むしろ、よくその程度で留まっているとの印象がある。
その点、欧米では政策の方向性がはっきりしている。急激なインフレを抑えるために矢継ぎ早に金利を上げていく過程には、日本政府に欠けた「痛みを伴っても目的を達成しよう」という強い意志が窺える。金利を上げれば、例えば、住宅ローンを支払えなくなる人が出てくるかもしれない。けれど、「それを乗り越えてでもやるんだ」と。
日銀が高を括る背景
では、なぜ日本は同じことができないのだろうか。
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source : 週刊文春 2022年10月27日号