インドへの出張の目的は、ハイテク産業の中心地の都市・ベンガルールに設立した楽天の新たなオフィスを訪れることだけではない。新しく拠点を設立した楽天メディカルのためでもあった。インドは、開発拠点の中核であり、医療分野についても重要なマーケットだと考えている。
例えば、がんの治療に関しては、次のようなデータがある。同国における新規のがん患者の数は130万人以上。これは世界で4番目に多い数字だ。その中で大きな割合を占めているのが頭頸部がんで、全体の約30パーセントに及ぶ。インドの頭頸部がんの患者数は世界全体の約26パーセントにも当たり、患者さんの多くはがんが進行した状態にあるため、予後不良であることが多く、死亡率も高くなっているのが現状だ。
僕が楽天メディカルが開発を進める「光免疫療法」に出資をしてきたのは、父親をがんで亡くしたことがきっかけだったことは、以前にもこの連載で書いた。残念ながら父の治療には間に合わなかったが、残された僕の使命は、この最新治療でできる限り多くの人を救うこと。そういう意味でも、がん治療分野で医療事業を成功させることは、必ずやり遂げなければならない仕事だと思っている。だからインドにおいて、この新しい治療法を紹介し開発を進めることは、とても重要なミッションなのだ。
ところで、インドにおける医療と聞いて、皆さんはどのようなイメージを持つだろうか。
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source : 週刊文春 2022年12月1日号