(おおだいらよしのぶ 将軍まいたけカナダCEO。1948年、新潟県生まれ。63年、六日町立五十沢中学校を卒業後、工務店や磁石工場で働く。75年、大平もやし店創業。83年、雪国まいたけ創業。2013年、社長辞任。現在はカナダで「将軍まいたけカナダ」を設立し、北米で黒舞茸の栽培・販売を行っている。)

 

 私が生まれ育った新潟県の五十沢(いかざわ)(現・南魚沼市)は、とても山深い集落です。

 我が家は茅葺の家で、五間×三間の梁間のある本屋の後ろに、中間と呼んでいたトタン屋根の四間×二間くらいの両親の寝室や炊事場がありました。家は農家でしたが、山の中なので田んぼは小さくて日当たりも悪く、米が6俵しかとれないんです。畑もなくて、集落の中でも極貧の家でしたね。

 だから、大正12(1923)年生まれの母は、「貧乏ほどつらいことはない」と口癖のように言っていたものです。貧乏人は体が壊れても働いて、貧乏から抜け出すんだよ、と。

 それで私たち兄弟は小学生の頃から、学校から帰ってランドセルを置くと、すぐに山の上の畑に行き、草むしりや薪作りをしていました。自分と同じ目方くらいの量の薪を二宮金次郎のように背負い、引き上げて立たせてもらってから、杖を手にすごい傾斜の斜面を降りていくのです。何百メーター下には川が見え、落ちたら命はないような場所でした。

 重い薪を背負って歩いているとき、私はいつもいつも思っていましたよ。

 牛や馬みたいに人間が一日中、背負(しょ)い下ろしをしている。こんな生活を抜け出すためには、人間は頭を使わなければならない。そうして「なぜ」を常に問うようになったことは、今でも私の原点であり続けています。

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source : 週刊文春 2023年3月2日号