(ねこひろし/本名・タキザキクニアキ お笑い芸人・マラソン選手。1977(昭和52)年、千葉県市原市生まれ。ワハハ本舗所属。2008年マラソンに初挑戦。その後カンボジア国籍を取得し、16年にカンボジア代表としてリオ五輪に出場。今年の東京マラソンでは2時間27分2秒でゴールし、自己ベストを更新した。)
僕は身長147センチなんですが、三兄弟の中で僕だけが子供の頃から小さかったんですよ。母は148センチで父は149センチなのに、2人の兄はなぜか170センチくらいある。しかも兄と違って運動も苦手だったから、将来、五輪選手になるなんて、周囲はもちろん、僕自身も夢にも思っていませんでした。
「ニャ〜」の決めポーズや「ポーツマス!」などの一発芸で知られる芸人の猫ひろしさん。マラソン選手としてリオデジャネイロ五輪出場を果たした世界で唯一の“五輪芸人”でもある。
1977年に生まれた猫さんは、千葉県市原市で育つ。メーカー勤務の父と専業主婦の母、5歳上と4歳上の兄の5人家族だった。
僕が住んでいたのは山と川がある自然が豊かな所。最寄り駅から自転車で30分もかかり、僕が中学生になった時にようやくできたセブンイレブンは朝7時から夜11時までしか開いてないような田舎町です。僕が生まれて間もなく買ったという実家は、木造2階建てで1階に台所と居間、両親の寝室、風呂とトイレがあり、2階は六畳間が二つ。そのうち一つを長兄が使い、次兄と僕が2人部屋でした。階段がすごく急で、僕は少なくとも3回は転げ落ちてます。
末っ子の僕は、落ち着きがなく勉強も運動も苦手でした。兄の影響で小学生からサッカーをやっていたけど、全然レギュラーになれなくて。最後の大会でようやく試合に出してもらえたのに、思い切り空振りして5分でベンチに下げられました(笑)。並行してソフトボールもやりましたが、からっきしダメ。卒業までずっとベースコーチでした。
でも、中学で始めた卓球は、そこそこ上達して最終的には県大会に出場できるレベルに。長距離走が得意だと気づいたのもこの頃でした。特に練習もしていないのにマラソン大会では一番速かったんです。
千葉県立市原八幡高校でも卓球部でしたが、長距離走が得意だということで県内の高校の陸上記録会に駆り出されたことがあります。名だたるスポーツ強豪校から集まっていたのは、ランニングシャツとランニングシューズを身に着けた箱根駅伝選手のようないでたちの生徒ばかり。体操着にサッカーシューズの僕は明らかに場違いでしたね。結果は散々で、周回遅れでゴールする有様。苦い思い出です。
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source : 週刊文春 2023年5月18日号