6月6日、楽天グループのJリーグ・ヴィッセル神戸は、スペイン1部リーグを4季ぶりに制覇したFCバルセロナとの親善試合を行った。この試合は、両チームに所属したアンドレス・イニエスタ選手にとって象徴的なものとなったと思う。彼は幾つもの見せ場を作ってくれ、スタジアムに詰めかけた多くの観客を大いに沸かせてくれた。試合後、FCバルセロナ時代の盟友だったシャビ・エルナンデス監督と抱き合うシーンは、胸が熱くなるものがあった。

 そして、ヴィッセル神戸でのラストマッチとなったのが、7月1日の北海道コンサドーレ札幌戦。スタジアムには2万7630人のサポーターが駆け付けた。試合後のセレモニーでイニエスタ選手は「すべては皆さんが示してくれたリスペクトや愛情のおかげです。また会いましょう」と話し、僕は日本文化を象徴する刀をプレゼントした。

 今夏限りでの退団は、イニエスタ選手自身が悩んだ末に決めたことだった。チーム成績は好調なものの、イニエスタ選手の出場機会は限られていた。感情を表には出さなくても、今季の状況には複雑な思いがあったことだろう。その中で彼が下した決断を、僕はリスペクトしたい。

 ヴィッセル神戸にイニエスタ選手が加入したのは、今から5年前のことだった。当時スペイン代表で、世界的な大スター選手だった彼の存在は、Jリーグにとても大きなインパクトを与えることになった。

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source : 週刊文春 2023年7月20日号