(ごとうゆうこ 声優。愛知県生まれ。1999年声優デビュー。ラジオパーソナリティや歌手としても活躍。代表作に『涼宮ハルヒの憂鬱』(朝比奈みくる役)など。今年9月に初の著書『私は元気です 病める時も健やかなる時も腐る時もイキる時も泣いた時も病める時も。』(小社刊)を上梓。)

 

 私は自己免疫疾患のせいで、これまで人生で2度、余命宣告を受けたことがあります。それでも高校時代に演劇に魅せられた私は、この持病を抱えていてもできる演劇関連の仕事を探し、声優というお仕事に就きました。一時期は病気休業のせいでSNS上では「後藤邑子死亡説」まで流れたんですよ。

 TVアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』(朝比奈みくる役)など人気作で知られる声優の後藤邑子さんは、愛知県一宮市に生まれた。市内の公立小学校に勤務する父と母、祖母、3歳年下の妹の5人家族。生家は父が建てた、2階建ての一軒家だった。窓の外には青々とした自然が広がっていたという。

 2階は両親の仕事部屋と寝室で、1階におばあちゃんの部屋とダイニングキッチン、オーディオルーム、そして子供部屋。オーディオは両親の趣味で、いつもクラシックがかかっていました。子供部屋は六畳で、パーテーションで区切って妹と共同で使っていました。よく喧嘩もしたけれど仲のいい姉妹だったので、パーテーションはしばしば開けっ放しでしたけどね。私が上京するまで、ずっと妹と一緒の部屋でした。

イラストレーション 市川興一/いしいつとむ

 我が家は親族に教員の多い、典型的な教員家系です。教育方針は徹底していて、朝のBGMといえばNHK-FMの『あさのバロック』(現在の『古楽の楽しみ』)が定番。いわゆる“お堅い”家だったので、基本的にテレビは観せてもらえませんでした。マンガやゲームはもちろん厳禁。家にテレビは1台だけ、おばあちゃんの部屋にあったので、テレビを観たいときは両親の目を盗むしかなかったんですけど、なにしろ小学生と小学校の教師は生活サイクルがほとんど同じなので、なかなかテレビを観る機会はありませんでした。同級生みんなが観ている人気のバラエティ番組なんて、泣いて頼んでも観せてもらえませんでしたから。

難病を抱えながら夢を追って上京。『ハルヒ』の大ヒットで、日本武道館に立つ

 うちは一宮市といっても木曽川に近い過疎地域だったので、家の周囲にビルのような高い建物はなく、家のそばには田んぼばかり。子供たちの遊び場といえば木曽川の河川敷がお決まりでした。だから友達に録画して観せてもらったトレンディドラマやアニメ『シティーハンター』に出てくる都会の光景には憧れましたね。コンクリート打ちっぱなしで吹き抜けのロフトのあるお部屋に住みたい……。いま考えると、いかにもバブルっぽいイメージなので恥ずかしいですけど(笑)。都会はずっと人が多く入ってきて、つねにみんなが何かをしようとして動いているイメージがありました。そういう“眠らない街”への憧れがあったんですよ。

 幼少期を自然の中で育った後藤さんは、小学校高学年でドッジボールチームに、中学生になるとバレーボール部に入り、練習に打ち込んだ。ところが中学3年生の春、異変が起きる。鼻血が何時間も止まらない日が続いた。特発性血小板減少性紫斑病。体内の免疫反応が過剰になり、自ら血液中の血小板を攻撃してしまい、結果出血が止まらなくなる、という難病だった。

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source : 週刊文春 2023年10月12日号