【前回までのあらすじ】一九七八年からスタートした歌番組「ランキング・テン」の元プロデューサー加藤達也がゲストとして呼ばれたYouTube番組の収録を見学することになった奏。当時の事務所とのしがらみや、そこに対抗するべくやらせなしのランキング形式で始まった「ランテン」がいかに画期的な番組であったか、緊張感ある中継の模様を加藤は饒舌に物語る。
失敗なんて数知れずですよ。
僕の演出についていけないって、カメラマンに降りられたこともありますし、演者とトラブったこともあります。詳しくですか? 言いにくいなぁ。時効? いや、その手には乗りませんよ。それ「今夜は無礼講」的な罠じゃないですか。
いや、そう言われるとテレビマンとしちゃあ、ちとつらいな。本当に少しだけですよ。
中継先でマネージャーをこき使って、怒鳴り散らしてるアイドルがいたんです。いや、イニシャルもちょっと……女性ですがね。それ以上は言えません。
僕はそれを聞いて腹立ったんで、叱ったんです。「周囲への感謝がないと、人が離れるぞ」って。そしたら彼女、怒っちゃって「今日は出ない!」なんて言い出す始末。僕も頭に血が上っちゃって「『今日は』じゃねぇよ! 今日出なかったら、永久にねぇんだよ!」って啖呵切ってね。プロダクションの社長がすっ飛んで来て、何とか丸く収まったんですけど、僕も上司に怒られましてね。「おまえの代わりはいても、あの子の代わりはいないんだよ!」って。こっちはよかれと思って言ったんですけど、僕も所詮は組織の駒かって、シュンとなりましたよ。
その子ですか? 消えました。やっぱり人間的にちゃんとしてない人は残らないですね。芸能界は「人間商売」ですから。
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source : 週刊文春 2023年12月28日号