失われた命、行方のわからぬ家族、崩れた家、止まった電気水道――元日の大揺れから2週間、被災地能登ではいまも厳しい状態が続く。自らも被災した立場ながら、地域のため、将来のため立ち上がる人々が、こんなにもいる。
元日に能登半島を襲った最大震度7の巨大地震。発生から2週間が過ぎ、奥能登地方を中心に被害の甚大な石川県では、犠牲者の数が220人を超えた。今も被害の全容は解明に至らず、厳冬の真っただ中、約2万人が過酷な避難生活を余儀なくされている。
だが、幾つもの悪路を越え、雪が降り積もる被災地を歩けば、力強く“今”を生き抜く人たちの姿が見えてくる。
◇
「もらえるだけでありがたいわ。みんなも家とか大変なんに。ありがとう」
温かい炊き出しの容器を受け取った被災者が、顔をほころばせる。雪が舞う中、輪島市の重蔵神社に隣接する長屋の一角には、長蛇の列ができていた。正午が近づくと、食欲をそそる美味しそうな匂いが漂い始める。この日、提供されたのは、野菜がたっぷりと溶け込んだ中華丼風のご飯だ。米炊きと配布を担当する近所の女性が明かす。
「実は、輪島で有名なミシュラン一つ星のフレンチレストランのシェフが中心になって、ここで独自の炊き出しを調理しているんです。ほかにも和食屋、居酒屋、イタリア料理屋、ラーメン屋などの料理人さんたちがいます」
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source : 週刊文春 2024年1月25日号