【前回までのあらすじ】瀬尾の公判が終わった。囲み記者との質疑応答も終え、タクシーに乗り込んで「山城法律事務所」に向かう奏は、裁判官から最後に「言っておきたいこと」を尋ねられた際の瀬尾の言葉を思い出していた。「今回の一件で、私は鏡になることに徹しました」「どうせバレないと思って邪心を剥き出した人々の姿を、私は容赦なく鏡に映し出しました」。
私は、罪は罪として罰を受けます。
もう誰にも天童さんのような悲しい選択をしてほしくない。言葉は時として、心を突き刺す刃と化します。人の身体ではなく、精神を傷つける唯一の凶器。
内側から崩れ落ちた人間の絶望は、何人(なんぴと)も入り込めない闇深い世界です。そしてその闇は、決して遠くにあるものではなく、手軽な通信機器とつながった薄氷の日常に潜んでいるのです。
瀬尾が話し終えた後、法廷が異様な静けさに包まれた。
少なくともその場にいた者には、瀬尾政夫が今回の行動を起こすにあたり、どれほど現実と向き合い、どれほど苦しんだかが伝わったはずだ。
弁護人がいくら説得しても、犯行動機を「私怨」として「公益目的」とはせず、略式起訴の“誘い”も突っ撥ねて、公開裁判を選んだ。
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source : 週刊文春 2024年2月22日号