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 長者番付1位になったこともある伝説のトレーダーが、咽頭がんで声帯を失い、昨年ファンドを閉じて引退。波乱の投資家人生を振り返りつつ、株式投資のノウハウを明かしたのが『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(清原達郎 講談社 1800円+税)です。

『わが投資術』

 著者は日本株を中心とした25年間のファンド運用で93倍という驚異的なパフォーマンスを残しました。その中心的手法は割安の小型成長株を独自のリサーチで見つけ出すことです。最も印象的な指摘が、〈市場は、あなたの意見が少数意見である限りあなたの味方です〉。

 投資では「株価に織り込まれていないアイデアを探すこと」が重要なように、事業でも常識に反するような取り組みがビジネスチャンスになることがあります。

 例えば、以前は中国の工場と取引して品質をコントロールすることは難しいと言われていました。ユニクロやニトリは、それを実現して飛躍しました。誰もがやった方がいいと賛成するようなアイデアは当然他社でも議論されています。一方で、社内からも反対意見が続出するような難しいことに飛び込んで実現すれば、他の会社が容易にアプローチ出来ない分、大きな競争力になるのです。

 長期的な成長をする企業を、どうやって目利きしているのか? 著者は、“経営者が9割”であり、「経営者がその企業を成長させる強い意志を持っているか」が必要条件であると指摘します。

 かつて、豆乳クッキーダイエットの通販が成功し、その後業績が低迷した時、ある人に「君たちは実力もないのに宝くじにたまたま当たったようなものだ」と言われたことがあります。ともに頑張ってきたメンバーに対する否定にも思え、私は強く反発しました。事業の成功には当然、運の要素もありますが、アイデアを形にし、販売し、広めていくためには様々な障壁があります。うまく行ったということはそれを乗り越えたということなのです。

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source : 週刊文春 2024年4月11日号