永野の勢いが止まらない。「配信王」を自称するとおり、彼が配信番組に出ると再生数が軒並み激増。テレビ番組にもゲストで出るたび物議を醸し、話題をさらっている。さらに最近は、回数限定ながら『永野に絶対来ないシゴト』(テレビ東京)や『永野&くるま クレバーなクレーマー』(テレビ朝日)といった冠レギュラー番組も次々と立ち上がっている。後者は、テレビ朝日に届いた視聴者からのご意見がクレバーなクレームか、ただの言いがかりかを判定するというものだが、実質わずか9分の番組にもかかわらず、喋りすぎて尺に収まりきらないため、1.75倍の速度で編集するという荒業がおこなわれるほど。舌鋒鋭い物言いは他の追随を許さない。

「無双よ! 永野くんが弾けちゃったときなんか、編集(で残った映像が)ほぼ永野くんだもん」

 マツコ・デラックスも永野をそう絶賛している。そんな永野が、『週刊さんまとマツコ』に2週にわたってゲスト出演し、49歳で再ブレイクに至るまでの道のりを自ら解説していた。

マツコ・デラックス ©文藝春秋

 後編では主に再ブレイク中の悩みを吐露。永野が特異なのは、そこに確固たるポリシーがないことだ。自分が嫌いなものはもちろん、そうでなくてもどんな相手にも粗を見つけ口撃することができる。彼を地下芸人時代からよく知る錦鯉・渡辺が「酔いが佳境にいったときの永野さんの目でいま出てる」と証言するように、酔っ払いの戯言かのようにその場でウケることを最優先した言葉を吐く。しかし、それが鋭い観察眼と的確な言葉選びによって思いの外、芯を食っている。その結果、いつしか「よくぞ言ってくれた」と、自分たちの“代弁者”のようにもてはやされるようになってしまい困惑しているというのだ。

 そんな永野にマツコが深く共感していたのも興味深い。自分も「おもしろくするために攻撃的なやつをウケ狙いで言ってたつもりが、真面目に聞かれちゃってることに気づいて、あー、違う、違うって。そっからうんことちんこの話しかしないようになった」と。

 これまでも、いわゆる毒舌でブレイクした人は少なくない。だが、毒舌は自分に対しても“毒”になりかねない。別の番組で永野は、「自分で首絞めちゃったというか。幸せになっていった今までの芸人やタレントを死ぬほど裏でディスってきた。だからもう一人の自分が許さないと思うから、俺たぶん全然幸せにならずに終わっていくと思います」(『あちこちオードリー』テレ東 4月3日)と語っていた。彼の鋭い観察眼は自分にも向けられている。まさに“クレバーなクレーマー”だ。その冷静さがある限り、この勢いのまま的確にシフトチェンジしながら活躍し続けるに違いない。

『週刊さんまとマツコ』
TBS 日 13:00~
https://www.tbs.co.jp/sanma-matsuko_tbs/

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source : 週刊文春 2024年7月25日号