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『神の子どもたちはみな踊る』(村上春樹 新潮文庫 550円+税)を読んだ。これから出演する作品の準備のため、阪神・淡路大震災について調べる必要があった。この小説の登場人物たちは、1995年1月17日、地震が起きたその瞬間、その場に“いなかった”人たちばかりだ。出身が神戸の人、神戸出身の知人を持つ人、親戚にも友人にも神戸に関わりある人はいないが地震のニュースを見続ける人。直接的な被害には遭わなくとも、何かが変わってしまった人たち。それはきっと、この国の大部分の人々の姿ではないだろうか。
私自身もそのうちの1人だ。2016年4月14日、東京で仕事をしている最中、地元・熊本で地震が起きた。家族や友人が被災して、命を落とした人はいなかったものの、精神的に追い込まれ、体は痩せ細って、以前の気力も生命力も失って衰弱してしまった人がいた。深刻なPTSDを発症した人もいる。またいつ地震が起きるかわからない恐怖の中で、毎日眠れない夜を過ごした人も多いだろう。そんな中、自分が現地に赴くことは周囲に止められた。何かできることはないかと探ったが、募金をすること、話を聞くことなど些細なことしか思い浮かばず、ただその混乱を領域外から眺める傍観者にしかなれなかった。
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source : 週刊文春 2024年8月1日号