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坂の都市の“いまだかつて例のないナゾの終着駅”「長崎」には何がある?

2022/01/24
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絶賛「大改造中」の長崎

 長崎といったら出島やグラバー園、中華街、眼鏡橋などが名所で、繁華街は浜町方面に広がる。長崎駅からは歩けないこともないが、路面電車やバスに乗り継ぐのがいちばん楽ちんだ。ところが、いまのところでは長崎駅の在来線改札口から路面電車やバス乗り場はずいぶん遠い。重い荷物を持っていたりすると、ちょっと絶望してしまうくらいの……。

 

 もちろんこれは仕方のないことであって、目下新幹線の駅の建設とそれに伴う駅前広場の工事の真っ只中なのだ。

 そもそも長崎駅が高架になったのは新幹線が高架でやってくることにあわせたもの。新幹線の高架が駅の東側、つまり市街地に近いところにあって、そこに並ぶように西側に在来線の高架がある。それが長崎駅の新しい構造である。

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 もともと、長崎駅はいまの新幹線の高架よりもさらに東側、現在絶賛工事中のところにあった。ホームも駅舎も地上で、東京から長編成のブルートレインがやってきていた時代の名残で長~いホームを持っていた。いまの新幹線や在来線の高架は以前の駅の西、かつて車両基地や貨物駅だった場所に設けられたものだ。

 つまり、おおざっぱにまとめてしまうと、市街地に近い地上にホームがあって西側に車両基地や貨物の施設があったところを大改造し、新幹線と在来線の高架新ホームを西側に、空いた東側の地上ホーム跡地にどでかい駅前広場をつくってやろう、というのが現在の長崎駅の姿というわけである。

 
 

 いまのところはまだ広場は更地に近いレベルで工事中。高架下には今年3月に「長崎街道かもめ市場」という商業施設がオープンし、秋には新幹線が来襲、そして2023年秋に駅ビルが完成して駅前もすっかり新しく生まれ変わる予定だという。

 だから、駅から仮囲いの通路をずっと歩いて広場のはじっこにたどり着いて、というのはいまだけの辛抱だ。もともとそこにあった駅を作り替えるのは大工事にもほどがある。

 工事中も駅の機能を損なうわけにはいかないし、かといって敷地は限られている中で安全を保ちながら進めなければならないのでそれはそれは大変な難事業。その完成過程でいくらか不便になってしまうのは、ほんとうにしかたがないことなのである。まあ、首都圏の大ターミナルみたいにいつまでたっても工事を続けられるのはさすがに困りものですけどね……。

 そんなわけで、長崎駅はいままさに生まれ変わろうとしているただ中にある。1905年、長崎湾の埋め立て地に誕生した九州鉄道の終着駅は、国有化(つまり国鉄になった)を経て原爆投下も経験。ブルートレインの終点としても存在感を示してきた。ブルートレインが消えたあとも、日本有数の運転本数をほこる在来線特急「かもめ」が盛んにやってくるターミナル。それが新たに、新幹線のターミナルになる——。