文春オンライン

麻薬戦争が起こるメキシコでもなく、ルーマニアのマンホールタウンでもなく…丸山ゴンザレス(46)が考える“本当に怖い国”

2023/11/25
note

 あとびっくりしたのは、僕は昔から「ただの旅行記」をパッケージにして売ってるだけの人間で、旅行記なんてしょせん自慢話以外なにものでもないはずなんです。でも最近それにも僕がちょっと理解できない形で批判されるようになって。

 たとえば僕が麻薬カルテルを取材してきて、こういうの見てきましたって言ったときに「ズルい」って言われるんです。ズルいって何? 僕、何年もプランを立てて色々なところから資金調達してきてコネクション作って取材してきて、それを見てズルいって。何かを達成したり成し遂げた人に対してズルいと言えるのは、的外れだし、そんなことを平気でぶつけてくることの方がよっぽどズルいだろと思いますね。

丸山ゴンザレスが考える“最も怖い国”

――数々の世界を見てきた中で、丸山さんが最も怖い国の一つに日本を上げていました。

ADVERTISEMENT

丸山 人間がコミュニティの中で生きるときに、本能のままに生きてしまうと崩れる関係性って、日本に限らず海外でもいっぱいあると思うんです。

 たとえば仕事で年齢が上の人に対して、敬うことって当然のことだと思います。それは裏社会であっても、僕が取材している麻薬ビジネスの中でも同じです。仁義的なこととか、相手に敬意を払うことって存在するんですよ。でも最近は「オマエは稼いでいないからコミュニティから排除する」とか、逆に稼いでいるから排除するとか、そういう今までの価値観では理解できないことが僕たちの暮らしている社会だけじゃなくて裏社会でも起きるようになっていて。これは海外よりも日本で強くみられる傾向かなと思いました。

©佐藤亘/文藝春秋

 他にもSNSで誰かを過剰に攻撃したり、善意とか正義とかあなたのためにとか、“耳ざわりのいい凶器”で相手を一方的に追い詰める人も増えましたよね? 良かれと思ってとか、本人はいいことをしているつもりだから何をやっても許されるみたいな感覚は危ないと思ってます。

関連記事