文春オンライン

「奪う不倫は長続きしない」37歳未婚女性の“規律”は正しいといえるのか

Rule1 汝何かを奪うべからず 「愛人の品格」――#2

2018/12/16

ベンチャー企業勤務 37歳未婚女性の場合

 彼女は37歳の未婚女性で、名を仮にKとしておこう。元々は監査法人に秘書職として勤めていたが、29歳でベンチャー企業の立ち上げに参加し、現在は創設メンバーかつ管理職として、有名複合ビルのオフィスで主に採用や新人教育を担当している。仕事は順調で、企業紹介を主たる目的としたメールマガジンの編集や、派遣やバイト職員の管理もほぼ一人でこなす彼女の日常はそのほとんどが仕事で埋まるほど忙しい。

 自宅はオフィスから徒歩で10分程度の都心部にあるマンションで、ペットの猫と暮らすために比較的築年数が古く、その代わりに部屋数と平米数が多い部屋を賃貸で借りてもう5年になる。オフィスに一度も顔を出さない休みはせいぜい週に1回、土曜日か日曜日のどちらかになることが多く、美容院の予定や友人との食事ですぐに1カ月の予定は埋まってしまう。

©iStock.com

 彼女の恋人は、彼女も経営に携わるその会社の社長で、企業立ち上げ当初から男女の関係が続く。彼は25歳になる前に学生時代に付き合っていた女性と籍を入れており、現在も、妻とすでに中学生になる息子と世田谷区内に暮らしている。当然、知り合った当初からKも彼が子持ちの既婚者であることは知っていたが、中心となって会社を作ろうとする彼の発想の豊かさや、独りよがりではない社会派なビジョンに好感は持っていたし、何度も二人で食事を重ねて、ある日食事の後に家に寄ってもいいか、と聞かれた時に、断る理由は思いつかなかった。

ADVERTISEMENT

 彼は家に上がり、今まさに立ち上がろうとしている新企業の出資者の話などで盛り上がった後、ソファでキスして、ベッドに移動したいと言った。そこにも、断る理由が見つからなかった。当然、セックスの後、ペットボトルの水を飲みきるよりも前に、彼はタクシーで自宅に帰った。次の週にも、似たようなことがあり、その次の週はスタートアップが大詰めでお互いに時間の余裕がなかったが、1カ月後にはまた似たようなことがあった。

©iStock.com

「奪う不倫は長続きしない」

 すでに8年目に突入する彼女と彼の関係は、会社の都合や彼女の引っ越し、彼の生活の移り変わりなどで何度か変化を経て、ここ4~5年は安定した形になっている。息子が大きくなったことで、彼の妻は週に数回のペースで美容の仕事に復帰するようになり、仕事関係の理由や時々の遊びなどで妻が遅くなる日は、彼は仕事の後にKの自宅に立ち寄る。すでにお互い食事を済ませている場合も、彼女が簡単に用意する場合もあるが、お酒は飲まずに、彼は深夜に自家用車を運転して自宅に戻る。うっかり寝てしまわないように、彼女はアラームを0時にセットしてからくつろぐようにしている。

©iStock.com

「奪う不倫は長続きしない」というのが彼女の持論である。昔の華族や大商人のようにお妾さんを囲ってなおあまりある富があるならそれは良い。ただ、社長とは言え彼女の恋人は不安定なベンチャー企業をなんとか軌道に乗せている身。そんな彼の財産に、愛人がいるというような証拠はおそらく一度も残っていない。彼女は料理の食材代やごくたまに二人で飲むお酒代、交通費、家賃、帰りに買ってきてもらうコンビニのお水やお菓子代すら、彼から受け取ったことはないと言う。