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本当にここを走るの? 東京五輪マラソンコースを巡ってわかった「強烈な環境」

2019年の論点100

2019/08/25

source : 文春ムック 文藝春秋オピニオン 2019年の論点100

genre : エンタメ, スポーツ, 社会

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 夏の朝方は湿度が高く、70〜80%くらいはあったのですが、それ以上に驚いたのが日差しと照り返しの強さです。朝なので直射日光も少しは柔らかいかな、と思っていたのですが、そんな予想を裏切るほどの強烈さ。路面も熱く、しばらく立っていると靴底を通して足の裏がじりじりとしてきました。私は現場に行っただけで、走ってはいないのですが、それでも少しくらくらっとなってしまうような環境で、選手たちは本当にこの中を走るのか……というのが正直な感想でした。私自身、このような暑さのなかでマラソンを走ったことは一度もありません。

 こうした暑さへの対策も、少しずつ行われ始めています。例えば東京都は、路面温度の上昇を抑える「遮熱性舗装」を、マラソンコースや競技場周辺の道に整備しはじめました。ただ、私もマラソンコースを巡った際に、遮熱性舗装がされた道路を実際に触ってみたのですが、残念ながら選手が気付くレベルでの違いは感じられませんでした。

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お金をかけないシンプルな対策

 他にも散水車や送風機、可搬式緑化など、様々な猛暑対策が検討されてはいますが、こうしたものを導入するにはどれも、かなりの費用がかかります。しかも、どれくらい効果があるのかは、実際に試してみないとわかりません。私はそれよりも、お金をかけずにできるシンプルな対策の方が、何倍も有意義ではないかと考えています。

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 それは、競技時間のさらなる変更です。たとえばマラソンは、現時点の午前7時スタートをもう一段階繰り上げて、5時スタートにするのです。夏は4時半くらいから日が出てくるので、5時の時点で外はもうかなり明るくなります。これだけで、確実に競技中の暑さは和らぎます。

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 2019年にカタールで行われる世界陸上では、マラソンのスタートはなんと午前0時です。真夜中のレースというのは斬新ですが、これだけ思い切ったやり方もあるのだな、と参考になります。