早朝の開催は、運営側にとって負担になるとは思いますが、なにより大事なのは選手の安全です。彼らの身体を守るためにも、ぜひ競技時間の繰り上げは実現させてほしいです。
一方で、暑さに気をつけなければならないのは、選手だけではありません。これは観客やボランティアも含め、会場を訪れるすべての人が注意すべき問題です。
ただ、どんなに対策を施そうと、2018年並みの暑さが続けば、おそらく熱中症で倒れる人は出てくるでしょう。そのときのために、みんなで助け合える環境を作っておくことが大切ではないでしょうか。目の前で熱中症になった人がいたら、どんな応急処置をすればいいのか。心肺停止になった場合にはAEDをどう使えば良いのか。そうした知識を一人ひとりが持つことで、みんながみんなの安全を守る大会にするのです。
オリンピックが終わっても、毎年暑い夏はやってきます。地球環境の変化に伴って、これからも年々気温は上がっていく可能性が高いでしょう。オリンピックをきっかけに、みんなが熱中症に対処できるようにしておくことは、今後を考えても決して無駄にはなりません。
2008年の北京オリンピックでは、大気汚染の影響を懸念したトップ選手がマラソン出場を辞退し、大きなニュースになりました。そしていまでは、「日本の夏はとても暑い」という情報が、世界中の選手の耳に届いています。このままでは、東京の暑さが競技人生に与える影響を心配して、出場を辞退する選手が出てきてしまう可能性もゼロではありません。
オリンピックは、私たち一人ひとりが支え、作り上げていくものです。猛暑対策も他人事とは考えず、みんなで議論し、その結果をもとに最善を尽くしていく。その先に、東京オリンピックの成功があるのではないでしょうか。
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