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連載この鉄道がすごい

池袋から1時間20分 SLだけじゃない秩父鉄道「3つの魅力」

急行電車のほうが観光に便利だ

2018/12/23

genre : ライフ,

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秩父や長瀞を巡る旅にはもってこいの「秩父路号」

 秩父鉄道の魅力その1。急行電車秩父路号だ。平日は朝と夕方を中心に熊谷駅~影森駅間で6往復運行している。休日は1往復減って5往復になるけれど、日中を中心として羽生や三峰口駅まで延長運転する。停車駅は寄居、長瀞、秩父、御花畑など。乗換駅や観光地の最寄り駅を結ぶ。

西武鉄道「レッドアロー」の座席を使用している秩父路号

 SLパレオエクスプレスは秩父鉄道の目玉商品だけど、観光にちょうどいい時間帯に1往復だけだから、SLに乗るだけで1日が終わってしまう。しかし秩父路号は運行本数が多く、朝の便から夕方の便まで選べるから、秩父や長瀞を巡る旅では便利だ。

長瀞駅から徒歩20分で宝登山ロープウェイの宝上山麓駅へ

 秩父路号に使われている6000系電車は西武鉄道の通勤型電車を改造している。座席は西武鉄道の特急電車「レッドアロー」の中古品で、2人掛けのリクライニングシート。オススメは車両の中央部で、通勤電車時代に片側に3つあった扉の1つを潰して大きな窓ガラスをしつらえた。秩父鉄道沿線の景色を楽しむにはここがオススメ。

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秩父路号の車内

 秩父路号に乗るためには乗車券のほかに急行券が必要だ。1乗車につき大人200円、子ども100円だ。ほとんどの利用者は「各駅停車で充分」と思っているようで、繁忙期の休日でも秩父路号は比較的空いている。ゆったりと2人掛けシートで景色を楽しもう。

沿線の風景も楽しい

秩父鉄道は数少ない貨客混在路線の一つ

 秩父鉄道の魅力その2は、多彩な車両たち。各駅停車に使われている電車は、東急電鉄や都営地下鉄で活躍した懐かしい車両だ。5000系は都営地下鉄三田線で活躍していた6000形電車、7500系と7800系は東急電鉄で活躍した8090系電車。7000系は元東急8500系で、2022年度までに東急線では引退予定となっている。都会で活躍した電車の第二の人生が秩父鉄道というわけだ。

 三峰口駅には引退車両を保存する公園もある。機関車や電車、貨車は内部も覗ける。車体の痛みは激しくて、悲しくも寂しい印象だ。鉄道輸送の歴史的財産のはずだけど、修繕費を集めるためにクラウドファンディングなどを活用したらどうかと思う。

三峰口駅には引退車両を保存する公園もある

はたらく鉄道の頼もしさを感じる

 秩父鉄道の魅力その3は貨物列車だ。私鉄で旅客列車と貨物列車が混在する路線は全国でも少なく、ここ秩父鉄道と三重県の三岐鉄道、岡山県の水島臨海鉄道だけだ。秩父鉄道の貨物列車は、武甲山から掘り出したセメントの原料・石灰石を運ぶ。黒い貨車がズラリと連結されて、その先頭で小さくてかわいい電気機関車が引っ張っていく。

小さくてかわいい電気機関車
黒い貨車には白い石灰石が満載されている

 時代の変化でトラック輸送に押されて減ってしまったとはいえ、現役で活躍する貨物列車は頼もしくカッコいい。秩父鉄道では電車と貨物列車がすれ違う場面や、途中にある広大な貨物駅に佇む黒い貨車たちを眺められる。はたらく鉄道の頼もしさを感じる。

 秩父鉄道といえばSL列車「パレオエクスプレス」だ。そこに異論はないけれども、ぜひ2度目は急行秩父路号に乗ってほしい。SL列車に隠れてしまった沿線の観光や秩父鉄道の魅力を再発見してみよう。

 

写真=杉山秀樹/文藝春秋

池袋から1時間20分 SLだけじゃない秩父鉄道「3つの魅力」

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