怒鳴る親、ひきこもる子供
家庭が安心できる空間でなければ、子供は力を発揮することができない。親は、勉強を教えることや、子供を管理することよりも、子供を安心させリラックスさせることを第一に考えてほしい。
しかし、この道約20年のプロ家庭教師が嘆く。
「玄関を入るなり、鬼の形相をした母親が出てきて『先生、今日はまだ授業ができる状態ではありません。しばらく外でお待ちいただけますか?』と言われて、近くの公園で1時間近く時間をつぶしたこともあります。私の目の前で親子喧嘩が始まり、目の前をモノが飛び交ったこともあります。たいていの場合、親が余計な一言を言ってしまうからなんです」
取材を通して、私も親の失敗談をいくつも聞いた。
「大事な時期にあまりにやる気がないようなので、『そんなのではダメだ!』と怒鳴ったところ、『ムカつくから勉強しない』と言って、それ以来、毎日自分の部屋にこもりきりで勉強しなくなってしまいました。あれが、第1志望に落ちた原因になってしまったと考えています」
「模試の結果がよろしくなかったにもかかわらず息子がリビングでテレビを見ていたのを見て、『あの学校に行きたいんじゃないのか? こんな成績じゃ到底行けないじゃないか。何で勉強しない? お金がもったいないから受験なんてやめなさい!』と怒鳴ってしまいました。なんとか本人が第1志望合格を果たしてくれたので結果オーライですが、息子にはそのときのトラウマがいまだに残っているようです。私の顔色をうかがうような表情を時折見せるのです。親として本当に未熟だったと思います」
「言うだけ無駄。いや、言えば言うほどむしろ逆効果をもたらした」と多くの保護者が証言する「NGワード」の代表格が、以下の3つだ。
●子供のやる気を潰すNGワード(1)
「ちゃんと集中しなさい」
集中力をコントロールすることは、トップアスリートでも難しい。5分おきに机を立ったり、ぼーっとノートを眺めているだけだったりと、端から見ていて明らかに集中できていないように見えるときでも、そこで「集中しなさい」と言ったところで文字通りの馬耳東風。
本当なら、そんな日は早めに切り上げて気分転換するのがいちばんだが、毎日の課題をこなさなければいけない現実は変わらないので、そう悠長なことは言っていられない。
こういうときは、課題を小さく区切って、「ここまでやったらおやつにしよう」などと、小さな目標を定めるのがひとつの方法だ。
そもそも膨大な課題を終えるまで際限なく勉強し続けるスタイルは考えもの。たとえば「夜10時30分を超えてしまったら課題が終わっていなくても寝る」などとおしりを決めてしまったほうがいいと私は思う。課題が終わらなくて困るのは自分だから、決められた時間のなかでなんとか課題を終わらそうという気持ちが芽生える。
時間が有限であることを身にしみて学ぶことも、中学受験のひとつの効能だ。