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「いらすとや」がイラストレーターの敵「ではない」理由

ニーズは高いのにコスト構造は厳しかった「素材」のジレンマ

2018/12/26

「いらすとや」でないものに費用をかける時代になろう

 一方で、それが上手くいきすぎた感もある。あまりに万能性が高かったため、日本中が「いらすとや」であふれてしまったのだ。他のイラスト製作者からみれば強力すぎるライバルにも思えるし、日本中のイラストが「いらすとやテイスト」で均質化されるのも気になる。

 だが、これは逆にチャンスだと考えるべきだ。

 人々は「いらすとや」を素材とすることで、良いビジュアルが入った文書の価値を、いままで以上に理解するようになっている。そこで差別化するなら、今度は「いらすとや以外で勝負するか」ということになってくる。そこには、ビジュアル素材の新しいマーケット価値が生まれるのだ。

「有料ですばやく素材提供する」サービスのチャンス

 そうなると、無料ではなく「有料で素早く素材提供をする」サービスの存在価値が高まる。有料で写真を提供する「フォトストック・ライブラリー」のビジネスは、ネット経由で簡単に注文ができるようになった2000年代後半以降、成長を続けている、と聞いている。Adobeは、世界中のAdobe製ツールを利用しているクリエイターから集めた写真やイラストなどを提供する「Adobe Stock」を展開しており、こちらも好調だそうだ。Adobe Stockの場合には、支払額に応じて「月間何点まで利用可能」というルールになっていて、利用のハードルも低い。こうした有料サービスはクリエイターに利益還元が行われる上に、利用範囲も明示されていて、企業内でも使いやすいものだ。

 

 これらのサービスに続くように、クリエイターと企業の側をつなぎ、適切なコストとスピード感でビジュアル素材の利用を促進する流れが生まれていくだろう。企業の側もクリエイターの側も、ライブラリーサービスの活用を含めてビジネスを考えるべきであり、「ビジュアル素材は発注されないとビジネスにならない」わけではないことを念頭におくべきだろう。「いらすとやは無料なのだから、イラストは無料で」という意識でいるのではなく、「いらすとやとは違うものには、きちんと対価を払う」モデルになることを期待したい。

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