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ハイグレードマンションに頻出する言葉とは?

 さて、前掲の白金ポエムで気になるのが「迎賓」という言葉。実はこれもマンションポエムによく出てくる言葉だ。

三菱地所レジデンス・野村不動産「ザ・パークハウス白金二丁目タワー」ウェブサイトより
住友不動産「品川イーストシティタワー」ウェブサイトより
株式会社ヤマザキ「サンコリーヌタワー横須賀中央駅前」ウェブサイトより

 マンションポエムとは「住む場所」の宣伝コピーなわけで、それが「迎賓」を推すのはすこし奇妙だ。少なくとも人を迎えられるような部屋に住んでいないぼくにとっては。しかし、マンションサイトの「共用部」ページにはほぼ必ずエントランス部の設えについてのポエムがあり、そこで詠われるのはたいてい迎賓調ポエムだ。そしてタワーマンションにおいては特にその傾向が強い。

 もちろん、友人や親戚などのお客さんを呼ぶこともあるのだろう。実際、タワー物件の多くがゲストルームの設備を備えており、それを謳うポエムもよく見られる。ただ、ここで言われている「迎賓」は文字通りの意味より、住み手を「賓客」に見立て、もてなすという表現によってエントランスを中心とした共用部の格調高さをアピールしたものであるように感じる。

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「要人をお招きする華やかさ」

 例えば「結界性があること。都市と邸宅を隔てるラインを明確にすること。それが超都心ともいえるこの場所で暮らすことへのおもてなし」(ゴールドクレスト「クレストプライムタワー芝」ウェブサイトより)や「海外のリゾートホテルのように、都会の喧騒から隔絶した別世界へと導く2層吹抜のエントランスホール」(住友不動産「品川イーストシティタワー」ウェブサイトより)というように、住民が帰ってきたときにエントランスに対して抱くであろう印象を謳ったポエムは、「おもてなし」「リゾートホテル」など、あたかも住み手が来客であるかのような表現をしている。その極北とも言えるのが下のポエムだ。

住友不動産「ガーデンヒルズ四ツ谷 迎賓の森」ウェブサイトより

 赤坂離宮の近くに建つ物件ということもあって「迎賓推し」なのだが、それにしても「ここは、選ばれし者だけが住まえる東京の中枢」「要人をお招きする華やかさ」「華やかさと落ち着きを共存させた、迎賓への解答」など、マンションの広告というより、もはやこれは園遊会である。もしかしたら、理想のハイグレードマンションは、最終的に迎賓館を目指しているのかもしれない。住民は要人というわけだ。