自滅していく山根前会長
「再興する会」はLINEで寄せられた情報をもとに、7月30日、都道府県連盟の会長や理事長、歴代オリンピック代表選手ら333人が日本オリンピック委員会(JOC)などに告発状を送ると、テレビメディアがこれに食いつき、アマチュアボクシングの問題が燎原の火のごとく広がっていった。
菊池氏によれば、そこから再興する会が手を打つ必要もなかったという。
「前会長がマスコミに出れば出るほど、立場を悪くされたと思います。私たちは、最初のきっかけを作っただけです」
前会長は、8月8日に辞任を発表する。告発から10日も経っていなかった。山根前会長は、自滅した。テレビに出演する前会長を止める人物は周りには誰もおらず、「裸の王様」になっていた。
新執行部は何を変えようとしているのか
その後、日本ボクシング連盟は前会長の辞任表明からちょうど1カ月後の9月8日に内田氏を新会長、菊池氏らなどを副会長に据え、新しいスタートを切った。
内田会長は企業経営にあたっているが、会長就任以来、地元には10日ほどしか帰省できず、菊池副会長は日章学園の後藤洋一理事長の理解を得て、ボクシング連盟の仕事に専念することを許されている。つまり、連盟からの報酬はない。
改革のターゲットを、内田会長はこう語る。
「これまで、ボクシング連盟は一般社団法人でした。この形態は、スポーツの統括団体としては極めて稀で、他の団体は公益法人です。なぜ、一般社団法人だったのか? おそらく、前体制が定期的な監査などを嫌ったからだと思われます。経理の流れが杜撰だったからでしょう。そこで、私としては他の競技団体と同様、公益社団法人として認定してもらうための作業を進めています」
そのためには、過去3年分の会計報告を提出しなければならないが、経理の基本となる領収書が見当たらないのだという。
「3年分遡って決算報告書を作成中ですが、あるはずの領収書がないんです。たとえば、遠征で発生した経費の領収書が見当たりません。まったくもって、お恥ずかしい話です。その穴を埋めるために旅行代理店に再発行を依頼したり、細々とした手続きを専門家を入れて作業を進めています」
また、職員との間に「三六協定」を結んでおらず、しっかりとした雇用契約がないまま職員を雇っていたような状態だったという。
「執行部に入り、過去の書類などを精査していますが……想像を超えた状態です」
内田新会長は公益法人化を目指し、認定を受けることで新しい組織に生まれ変わったことを宣言し、「信用」を得たいと考えている。
「信用を得られれば、企業からの支援もいただけるようになるはずです。なんとしても、自立した組織として運営していきたいと思っています。そのために、現在はすべてを透明化する作業を進めています」