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審判に「自分の誇りにかけて判定をしてください」

 不正判定に揺れた審判部門も、秋の国体からは大きな改革が施された。会長は徹底した透明化を早くも実現している。

「不正判定に深く関与したと思われる関係者は外したうえで、秋の国体が始まる前、私は審判員の方々に、『自分の誇りにかけて判定をしてください』と伝えました」

 スポーツに携わる人間の“良心”に働きかけたという。しかし、情に訴えるだけでなく、透明化を次のように促した。審判の控室に、審判員のすべての採点が張り出されるようになった。疑問符がつく判定があれば、審判講習会で問題点が指摘され、審判技量を高めていく仕組みが出来上がった。

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「公平な判定を受けられる。これがスポーツの基本ですよね。それが保証されないようでは、魅力あるスポーツになれるわけがありませんし、ボクシングをやろうと思う若者もいないでしょう。かつては、ボクシング連盟推薦の選手のゼッケンには、『日連推薦』という文字が入っていました。それは前会長からのメッセージだったわけです。その文字も外しました。審判の方が誇りをもってジャッジできるように変えたつもりです」

山根体制を作り上げた「人事」の仕組み

 12月には、第三者委員会からの報告をもとに、山根明氏、長男で副会長職にあった山根昌守氏、内海祥子常務理事を除名、 吉森照夫専務理事を資格停止処分にする方針を固めた。会長は4人に対して弁明の機会を与える予定だ。

「2月に弁明の機会を設けます。すべて、手続きに従って進めています」

 それにしても、終身会長就任など、山根体制はなぜ作られてしまったのか。菊池副会長はいう。理解するための鍵は、「人事」である。

「人事面では、こんな仕組みが出来上がっていました。国際ボクシング協会(AIBA)には、コーチを育成するためのシステムとして、資格取得プログラムがあります。定められたプログラムを受講し、その内容によって『スター』が授与されます。国際大会にコーチとして参加するためには、この資格、スターが必要なんです。優秀な選手を育てたとしても、資格がなければ、国際大会にコーチとして帯同することが出来ず、ボクシング連盟が決めたコーチに頼むしかなくなります。コーチは誰だって自分が育てた選手の面倒を最後まで見たい。前体制は、AIBAへの受講申請ができきるかどうか、その推薦権を握っていたんです」

 連盟に異を唱えたならば、晴れの国際舞台でのコーチが出来なくなってしまう。間接的に選手を”人質“にして、人事権をコントロールしていたのだ。

 現在、内田会長はプロとの交流復活や、様々な施策に取り組んでいる。

「実は、プロの忘年会に出席させていただきました。とても小さなことかもしれませんが、ひとつひとつ正常化させていくしかありません。私としては、一刻も早く、日本ボクシング連盟が生まれ変わったと認めていただけるように、仕事を進めていきます」

 改革は始まったばかりである。