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東海と青学の明暗を分けた「ミス」とは

 全10区間が隙なくハマり、起用された選手はミスなく、冷静な走りを見せた。青学大との差は、そのミスの差だった。

 原晋監督は「4区、5区が誤算だった。自分の采配ミス」と語っていた。4区の岩見秀哉(2年)は世田谷ハーフ2位。この成績と直前の状態を見た原監督の、「いける」という目利きがあってこその起用だった。しかし結果は区間15位。トップでタスキを受けたが3位に後退した。選手を見極める原監督の“勘ピューター”こそが、これまで箱根優勝を手許に引き寄せてきた重要な要素だったが、今回はそれが外れた形になった。復路は優勝を果たすなど力は十分にあっただけに、4区と5区のミスが往路ではトップ東洋大と5分30秒の差となり、ノーミスの東海大に総合で敗れた最大の要因になった。

 東海大が勝てたのは、絶妙な区間配置に加え、ライバス校のミスもあったが、彼らがしっかり走れるだけの走力をつけたことも大きかった。その走力は東海大の持ち味であるスピードの上に長距離を走ることで身に付けられた「東海大オリジナル」ともいえるものだ。

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 選手は夏まではトラックを中心にスピードを磨き、その後、長い距離を走って箱根仕様に仕上げていくが、今回のレースでは、このスピードが生きた。1500mで日本選手権2連覇を達成した館澤はレース終盤にそのスピードを見せてくれたし、1区鬼塚、7区阪口、8区小松らが後半にギアを上げて走れたのもトラックでのスピード強化が活きたと言える。

逆転勝利に導いた復路の選手たち ©末永裕樹/文藝春秋

選手側からの疑問の声で調整を見直し

 さらに今シーズンは、ピーキングを本番に合わせるために箱根へのアプローチを変更した。従来、東海大の全日本大学駅伝から箱根までは記録会などのレースに出場して好タイムを出し、その勢いのままハードな練習メニューを直前までこなして、本番に備えるというものだった。

 だが、昨年、直前まで疲労が残る練習を課したことに選手側から疑問の声が上がり、今シーズン、両角監督と西出仁明コーチは全日本大学駅伝以降の調整方法を見直した。レースへの参加をやめ、箱根仕様の足を作るための合宿をした。ただ長い距離を走るだけではなく、後半に粘って走れるような足を作る練習メニューを課した。その成果が表れたのは3区の西川雄一朗(3年)の走りだ。国学院大の青木祐人(3年)に一時離されたものの、最後に粘って1秒逆転して4区館澤につなげた。西川だけではなく、7区の阪口がラストに東洋大を追いつめたように全員が最後まで粘って走れるようになったのだ。

「箱根モードのための練習の成果が、それぞれの選手の走りとして後半に出たなと思います」

 両角監督は満足そうにそう言った。