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両角監督の“新しいやり方”

 そうした練習の裏付けがあって、選手は各区間を好走した。さらにコンディション調整は各選手に任され、チーム練習の際に負担が大きいと感じた場合は、申告して練習量を減らすなど、常に自分の身体に相談してピーキングを箱根本番に合わせるようにした。チームがもうワンランク成熟するために昨年とは異なり、選手の自主性を尊重したのだ。

 また、今回は補欠要員の關颯人(3年)を起用せず、松尾淳之介(3年)も8区から交代させたが、ここに両角監督の新しいやり方が見えた。

「關や松尾は走れる状態でしたが100%ではなかったんです。それよりも小松、郡司の方がよかったので起用しました。昨年まではタイムや実績を重視し、選手を説得することを意識していたのですが、今回はその反省を活かして、過去の実績にとらわれず、自分の目を信じて選手を起用することができたと思います」

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 両角監督が選択した小松が8区で区間新を出し、郡司はアンカーとして快走した。選んだ選手が活躍したことで自分の目による起用が間違いないことを確信できたのは、両角監督にとっても大きな収穫だろう。

大会新記録の10時間52分9秒で堂々の初優勝を果たした ©末永裕樹/文藝春秋

「われわれは王者ではないですから」

「ここまでチャレンジと反省を繰り返して、ようやく総合優勝することができました。」

 東海大が強くなれたのは、昨年の失敗例をそのままとせず、次にうまく活かして常に新しいやり方にチャレンジしてきたからだ。自分たちのやり方を変更するのは勇気がいるが、何も成し得ていなかった東海大は常識にとらわれず、チャレンジしやすい環境にあったともいえる。

 新しいやり方が結実し、優勝した。こうした成功体験を元にチームは成長し、強くなっていく。来年は青学大や東洋大に追われる身になるが、両角監督に過信も慢心もない。

「われわれは王者ではないですから」

 館澤ら“黄金世代”は来シーズン、4年生になる。この優勝をベースに、東海大が本当の強さを見せるのは、2020年の箱根駅伝になるだろう。

箱根0区を駆ける者たち

佐藤 俊

幻冬舎

2018年12月19日 発売