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優勝を目指すために必要な“3要素”

 そのために重要な要素は3つである。1つ目は、3連敗しないこと。16年のカープは、前半戦で3連敗が一度もなかった。1勝2敗と0勝3敗は、天と地ほどの差がある。3つの負け越しを取り戻すのには、1ヶ月かかる。3連敗しなければ、少なくとも首位争いに絡んでいられるだろう。だからこそ、鍵は先発陣。今永、濱口、石田、東の4人で左腕王国を築いてもらいたい。合言葉は、「4人で週3勝」だ。

 2つ目は、1番打者を固定すること。16年のカープは田中を1番に固定できた。2番の菊池が最多安打の181安打を打ったことももちろん大きな要因ではあるが、2番バッターは常に1番バッターの影響を受ける。野球の中で、最も難しい打順と言っていい。成績が良いに越したことはないが、大切なのは「固定」できること。1番が固定できると、2番バッターは役割を全うしやすくなる。攻撃のクセをお互いで把握できるからだ。

 98年に優勝した時は、一塁ベース上の石井琢朗とバッターボックスの波留敏夫はアイコンタクトでランエンドヒットを成功させていたという話を、本人から聞いた。1番から打順が始まることは試合の中でほとんど初回しかないため、打順は成績に影響を与えないという声もあるが、実際はそんなに単純にはできていない。前に誰がいて、後ろに誰がいるかは、かなり重要である。特に2番は、後ろにロペス、筒香、宮崎、ソトが控えている。このソトが2番を打つという可能性もあるが、今重要なのは、1番である。ホームラン王のソトでさえ、1番バッターの影響は強く受けることになる。1番が固定されることは、その後の打順全体に好影響をもたらす。

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 3つ目は、盗塁。16年のカープは、セリーグで唯一100を超える118盗塁。あとの5チームの平均盗塁数が66なので、他のチームの倍近い数の盗塁数だった。盗塁という作戦がセイバーメトリクス上重要視されていないのは、リスクをとって成功したとしても「得点期待値」という指標がリスクほどはリターンがないため。とはいえ、盗塁の魅力は成功することだけではない。塁上から与えるプレッシャーは相当なものがある。

 伝説のスピードスター赤星氏の著書『頭で走る盗塁論』によると、ピッチャーが山本昌(元中日)の時は、走るそぶりを見せてあえて走らないということをやったそうだ。この行為が相手バッテリーに与えるストレスは計り知れない。球種はストレート系が増えることが予想される上に、バッターに完全に集中しづらくなる。こうして1・2番で精神を消耗して迎えるロペス、筒香、宮崎だ。打順が三回りする頃には、ほとんどのピッチャーは普通の精神状態ではないだろう。だからこそ、14年に39盗塁で盗塁王を獲得した梶谷の復帰は鍵となる。

梶谷の復帰が鍵になる ©文藝春秋

 梶谷の盗塁については以前も書いたが、特筆すべきは失敗の少なさだ。前出の赤星氏は著書の中で、「チームのことを全く考えないでいいのなら、年間90盗塁はできる」と語っている。梶谷も、似たようなことを言っていた。つまり、「走れるけど走らない」という選択は、常に塁上で行われているということである。野球について普段は多くを語らないが、こと話題が塁上に移った途端、彼の哲学は花開く。試合展開、前後のバッターとの兼ね合いから、「何球目」に走るのがベストなのかを考え、そこしかないというタイミングで成功させる集中力は、間違いなく球界でもトップクラスだ。昨年は怪我での離脱もあり、チームも打線を重量化したことから盗塁の重要度は下がったが、再び「盗塁」が脚光をあびるなら、梶谷は蘇るだろう。

 以上が、今期のベイスターズ展望。オフシーズンに入る際、「ベイスターズは、強い、ですよ」と教えてくれたのは、他でもない筒香だ。強い「と思います」とは言っていない。あくまで、言い切っている。今永はオーストラリアで行われたウインターリーグに参加し、6試合に先発して無傷の4勝。35イニングを投げて自責点わずか2点のみの防御率0.52、6試合で計57奪三振という快投を見せた。少なくとも、今年のキーマンの1人は「悔しさ」を保ったオフシーズンを送っていることが伺える。常勝軍団となったカープも、超大型補強を成功させた巨人も、簡単な相手ではない。それでも、優勝に向けてここまで準備が整ったベイスターズもそう見られることではない。「新元号」の最初のチャンピオンフラッグは、開国の地・横浜にこそふさわしい。98年の優勝の時は、関内の飲食店が全て無料になったという都市伝説を聞いたことがある。17年に引退した下園さんが、関内で飲食店を開いたそうだ。今から10月10日あたりの日程で、そのお店の予約を取っておくことにしよう。

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