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「めっちゃ泣いたわ!」 読書家のタイガース・矢野監督を号泣させた一冊の本

文春野球コラム ウィンターリーグ2019

2019/01/05
note

4打席3三振もOK

「超積極的、諦めない、誰かを喜ばせる」

 二軍監督を務めた2018シーズン、このテーマを掲げて見事日本一となりました。

 勝つことだけにこだわって良いパフォーマンスや成長の妨げになるのであれば2軍はしっかり育成するべきといいます。選手に投げかけたこの言葉を、若虎たちは「出来すぎやろ!」というほど体現しました。根拠のある失敗はOKとすることで積極性を失わない。諦めずに最後まで全力疾走する。家族、友人、恩師誰かが喜んでいるところを想像して頑張る。これに加え監督として「話を聞くこと」を特に大切にしています。

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「例えば江越が4打席中、本塁打1本と三振3つやった。本塁打はよかったけど、三振3つはなぁ……って言うのじゃあかんねん。そこは本塁打難しいボールを良く打ったな! あとの3つは打席の中でどういう考えをしていたんや? と江越の考えを聞くねん。」選手自身が熟考して打った結果三振ならその考えを踏まえて教えていけるからだそう。

積極性が求められる ©文藝春秋

 話を聞いたうえで「よし、明日は今日空振りしたボールのうち一球ファールにしていけるよう練習していこう! そしたら三振が一つ減るからって声をかけるねん!」これを聞いてみなさんはどう思うでしょうか。「三振3つはあかんな! せめて1つくらいヒットにしないと」と言われるのと「よし、一球でもファールにして三振を減らそう!」と言われるのを。プロの世界では甘い! という方もいらっしゃるかと思いますが、後者、矢野ワードの方が気持ちが前に向くと私は思うのです。そうすると選手たちの野球に対する気持ち、姿勢、取り組み方が必ず変わります。現に、先日結婚を発表したばかりの板山選手の妻が「2018シーズンは発する言葉も前向きで、落ち込んでばかりの昨シーズンまでとは全然違いました」と言っています。

 プロ野球のイメージとは少し違うこの矢野さんの指導方針が1軍ですぐに勝利へとはつながらないかもしれません。しかし、間違いなく球場に来たみなさんが楽しいと感じる野球を見せてくれるはずです。ファンを喜ばせる―。矢野さんと選手たちは約束を果たしてくれます。スローガンの「オレがやる!」「オレ」がカタカナなのは女性ファンも含めてみんなが「オレ!」だからです。みんなの力で温かく矢野タイガースを見守りましょう。おのずと勝利はついてきます。ほら、宮崎のサンマリンではなく甲子園で舞う矢野さんの姿がもう見えたでしょ。

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