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平成の終わりに考える ZOZO前澤友作さんは花火師か、あるいは思想のある経営者か

100万円さえ当たってくれれば良かったのになあ

2019/01/10
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これだけ盛り上がるのはタダだからですよ

 そして何より、1円も払いたくない。リスクなく、大きなリターンを。少しでもコスパよく、エレガントに。ネットでは一部の専門家の間から「これが新しい広告の形だ」みたいな過剰な評価まで出てきておりましたが、これだけ盛り上がるのはタダだからですよ。

 PayPayなるソフトバンク系の電子決済でも「100億円分のポイント還元だ」とか言って欲しくもない高額家電を買う人が続出したのも、ある種の「お得感」に群がる大衆心理みたいなものが平成を生き抜いた日本人の精神骨格に染み付いていると思うんです。まあ、100万円外れて最高にムカついてはいるんですが、まあ、夢を感じさせてくれたからまあいいかと。良くないけど。

©iStock.com

 それこそ、豪商紀伊国屋文左衛門が元禄文化華やかな時代によそ様の雪見会場を妨害するために大判ばら撒いて住民が殺到して台無しにしたのと同様に、成金が思い付きで変なことをやる、それを見てみんなが手を打って喜ぶ、それを見た成金がさらに過激なことをしようとするというパフォーマンスの連鎖ってのは大事だと思うんですよね。

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自分から積極的にひけらかしにいく姿勢は嫌いじゃありません

 しかも、前澤さんのTwitterプロフィール欄はふつうの内容は書いてなくて「月に行く予定の人で、ZOZOの社長で、剛力彩芽さんが彼女で、リツイート数の世界記録保持者」ってのが自己紹介になっとるという。

剛力彩芽さん ©getty

 自分のことを他人に紹介する際に、芸能人が私の彼女ですと言い切るスタイルが男らしいじゃないですか。そりゃ上場企業経営者に芸能人や女性タレントをつまみ食いしてややこしいことになった人たちは多数見てきたけれど、自分から積極的にひけらかしにいく姿勢は嫌いじゃありません。抱えたミサイルはとりあえず全弾ぶっ放しにいく態度は素晴らしいと思います。100万円が外れて最高にムカついている以外はその潔さに惚れるんですよね。

 他方、私のように証券投資が好きな人間からしますと、どうしてもZOZO(旧社名「スタートトゥデイ」社)は興味深い銘柄であり続けました。最近はどうでも良くなりましたが、以前は深夜番組の銘柄情報で取り上げたりして、ずっと注目していた理由はその「思想性」にあります。