言われてみれば、少なくなったのかもしれない。自宅近くの公園に行って目に入ってくるのは、ドリブルするサッカー少年に、親子でラリーを続けるテニス少女だったり……。至る所で凧を浮遊させていた少年たちは、正月だから例外として……グローブやプラスチックバットを手にした子どもは、いなかった。
そんなことを思ったのは、阪神タイガース・藤浪晋太郎の言葉が頭にあったからだ。「自分として(グラウンド外で)強くやりたいと思っていることが野球振興で。どんどん子どもが減っていく中で、野球が“見るスポーツ”としては人気ですけど“やるスポーツ”としては(人気が)落ちてきている」。減少の一途をたどる野球人口の現状に24歳は危機感を抱いていた。
今に始まったことではないし、野球振興への取り組みはプロ、アマ問わず注力している。阪神も18年から「アカデミー」を開校し、OB選手がコーチを務めて子どもたちの「阪神」、「野球」との接点作りに励んでいる。昨年12月には契約更改した巨人・菅野智之が、「そういうものを目にしたら、野球選手になりたい人も増える」と将来的な10億円プレーヤーの出現について持論も語った。
何もタイガースの若きエースだけが、憂慮している問題ではない。ただ、藤浪が有言実行で取り組む地道な活動こそ、今後、多くの子どもたちの心に確実に響いていくのではないかと思っている。
藤浪が野球教室に込める思い
1月6日、ジャージに身を包んだ藤浪は、早朝から兵庫県小野市で野球教室を開いた。契約するZETT社の協賛も得て、昨年、同市で初めて単独で開催し、2年連続。前回240人だった小学生の参加者を今回は、より密着度を高めるため約70人に絞った。
キャッチボールでは「野球は捕らないと投げられないスポーツ。捕ることも意識して」と丁寧に指導。最後は足のステップを使って10球ずつ投げさせ「1日10球意識すると、1年で約3600球違ってくる。胸に投げろとかは指導者から言われると思うので。違う視点で教えられればと思って」とプロのこだわりを言葉に込めていた。
自らがノックバットを握っての守備練習に、子どもたちから7人を選抜して夢の1打席対決。「勝負事は勝たないといけないんで」とガチンコで打席に立って、子どもたちの全力投球にフルスイングで応えた。みんながお楽しみの「じゃんけん大会」ではサイン色紙、サインボール、打撃手袋、ネックウォーマーの大盤振る舞いで、開始直後は緊張の面持ちだった子どもたちにも笑顔が咲いていた。
「自分が子どもの時に、プロ野球選手に指導してもらったりとか、話してもらったりとか、すごい嬉しかった記憶があるので。子どもの時に憧れの目で見てたのが、今は見てもらってるとは思ってるので。逆にそういう立場になった時に、こういうことができればと思っていた。(野球教室を)できて自分ではすごく嬉しい」