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根尾昂は本当に中日で良かったのか 各球団の“育成の上手さ”を検証

文春野球コラム ウィンターリーグ2019

2019/01/17
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過去50年のデータを調べてみた

 そこで過去50年(2017年~1968年)の中日のドラフト指名選手を調べた。すると、上位指名で入団した高卒野手は29人。そのうち、規定打席に到達した選手は12人だ。彼らはレギュラー獲得まで何年かかったのか。

 大島康徳(3位4年目)、宇野勝(3位4年目)、中村武志(1位5年目)、山崎武司(2位10年目)、立浪和義(1位1年目)、井上一樹(2位野手転向後6年目)、荒木雅博(1位7年目)、森野将彦(2位10年目)、平田良介(1位9年目)、堂上直倫(1位10年目)、福田(3位12年目)、高橋(1位7年目)。

 平均7.1年目だった。

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「やはり遅い。育成が下手だ。高卒で入団するなら、中日以外が良いのでは」と思うだろう。そこで、セ・リーグの他球団も全て調べた。

 過去50年のドラフトで高卒上位指名野手が最も多かったのは広島で35人。そのうち規定打席到達選手は高橋慶彦、山崎隆造、緒方孝市、東出輝裕など10人。彼らは平均7年目でレギュラーを獲得している。

 巨人は31人。規定打席到達選手は篠塚和典、駒田徳広、松井秀喜、元木大介など12人。平均6.9年目。

 ヤクルトは29人。八重樫幸雄、池山隆寛、岩村明憲、川端慎吾など10人が平均7.2年目で規定打席をクリア。

 阪神は26人。しかし、関本賢太郎、濱中治、中谷将大の3人しか規定打席に達しておらず、平均8年目と遅い。

 DeNAは最少の22人。規定打席到達は田代富雄、谷繁元信、内川聖一、梶谷隆幸、筒香嘉智の5人。平均6年目だった。

 半世紀のスパンで見ると、中日の平均7.1年目は決して遅くはない。また、高卒上位指名野手でレギュラーを獲得したのは巨人と並んで最多の12人。実は中日は多くの花が咲く球団なのだ。

 さらに大抜擢の実績もある。立浪だ。結局、高卒1年目から規定打席に到達した選手はセ・リーグでは彼しかいない。中田スカウトが言う。

「星野(仙一)さんは血の入れ替えに積極的でした。そのために思い切ったコンバートやトレードも行いました」

高卒1年目から規定打席に到達した立浪和義 ©文藝春秋

 立浪が入団した1988年には不動のショートだった宇野勝をセカンドへ移した。当時の宇野は12年目30歳。まだ動けた。しかし、指揮官は大英断を下した。

「星野さんはよくスカウトとコミュニケーションを取りました。『中村ってキャッチャーはどうなんだ』と聞かれ、体力は抜群で肩は1軍レベル。でも、その他はまだまだと答えたんです。すると、『よし、分かった。中尾(孝義)を出す。いたら、使いたくなるだろ』と」

 中村が規定打席に到達した1989年、中尾と西本聖のトレードが成立している。

 さぁ、与田剛監督はどうするのか。

 昨今の他球団の傾向のように3年は2軍で経験を積ませて、4年目に台頭させるのも手。また、1年目から金の卵を孵化させるため、大胆な環境整備をするのも手。一方、優勝劣敗のプロの世界。新人も容赦なく荒波に放り投げ、7年近く生存競争を勝ち抜くのを待つのも手だ。

「やはり根尾は中日で良かった」

 ファンも球団関係者も、きっと根尾本人もそう思いたいに違いない。指揮官の育て方が問われている。

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