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都市農地が続々と住宅マーケットに供給される

 もうひとつの環境変化が、都区内に多く眠る農地だ。今でも世田谷区や練馬区を歩くと多くの都市農地を見ることができる。これらの農地は生産緑地制度に登録した土地が多く、固定資産税が宅地並み課税とはならずに農地並みの課税として取り扱われている。

 この生産緑地制度に登録するには農業を30年間継続することが条件となっているが、東京都内では約3300 haが登録されている。都区部では練馬区は189 ha、世田谷区でも95 haもの土地が生産緑地となっている。

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 この営農30年の期限が最初に到来するのが2022年だが、現在登録されている生産緑地のおよそ8割が2022年に期限切れを迎えるとされている。期限満了と同時に売却や賃貸アパートなどとしてこれらの土地がマーケットに供給されると東京の地価は、供給圧力に押されて大幅に下落する可能性が囁かれている。

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 生産緑地制度の期限延長や条件の緩和などがすでに打ち出されてはいるが、生産緑地所有者世帯の多くで高齢化が進み、円滑な事業承継が進んでいないのが実態だ。また期限切れの生産緑地を借り上げて農業を営む法人個人がどれだけ出現するかも不透明だ。

 これから東京都内では相続ラッシュが起こる。そして意外と多い生産緑地の一部が賃貸や売却といった形でマーケットに拠出されてくる。いっぽうで東京の人口増加ペースは鈍り、2025年を境に減少に転じる。人が集まらなくなることはそれだけ住宅に対する需要が減退するということだ。

都内の不動産は「借手市場」から「買手市場」に

 もちろん住宅数は人口だけで決まるものではない。これまでの日本は人口の増加ペースが鈍っても、世帯数は増え続けてきた。ライフスタイルが変化し核家族や単身世帯が増えた結果、日本の世帯数は増え続け5340万世帯(2015年国勢調査)になっている。しかし、国立社会保障・人口問題研究所の推定では2023年の5419万世帯を境に日本の世帯数は減少に向かうとされる。

 これからの日本は高齢者の単身世帯は増加するが、高齢者の多くはすでに住宅を所有しているケースがほとんどで、新たに住宅を買うあるいは借りる層ではない。そして若者人口が減少するということはやはり住宅に対する実需が減らざるを得ないことを意味する。「供給が増えて、需要が減る」ということは、価格は下がる。経済学の基本中の基本である。

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 いっぽうで都内の不動産価格が下がるということは住宅を選ぶ側から見れば朗報だ。賃貸でも購入でも都内の不動産はよりどりみどりになる。つまり都内の不動産は「借手市場」「買手市場」に転換するのだ。

 都内での住宅選びの自由度が高まるということは、都内における住宅選びの審美眼が上がることを意味する。今まではとにかく交通利便性だけを重視して会社にアクセスしやすい住宅を選んできた人々が、落ち着いて都内に「住む」ということを様々な角度から「考える」ようになるだろう。