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2020年以降、不動産価格が上がる家、下がる家を分ける「街間格差」とは?

2019/01/18
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これからは街の環境や機能で家を選ぶ時代に

 中古住宅や土地が大量にマーケットに出てくれば、これまで新築マンション広告を、目を皿のようにして眺めていた顧客が、立地の良い暮らしやすい街を選択するようになるだろう。これまでは「会社ファースト」で住宅選びを行ってきたのが、テレワークが主流となり必ずしも毎日朝9時から夕方5時まで会社にいなくてもよくなれば、通勤という概念から離れ、一日のうち長い時間を過ごす、自分が住む街の魅力度を精査するようになるだろう。

 こうした動きはこれまでの鉄道一本やりだった交通手段に対する考え方をおおいに変える可能性を秘めている。駅から徒歩何分という選択肢ではなく、自分たちの住む街の環境や機能にも目を向けるきっかけになるのである。

 都内でも駅からは遠くとも意外と緑などの自然環境が豊かな住宅地はたくさんある。とても都内とは思えないような静かな住宅地もある。必ずしも湾岸タワーマンションに住んで、無理に着飾った生活を送らずとも都内にはすでに良い街がたくさんあるのだ。

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 デベロッパーが謳う新築マンションのポエムのような宣伝文句だけに惑わされずに、じっくり街選び、住宅選びができるようになるのがこれからの東京だ。

©iStock.com

街間競争に敗れた街は地価が大幅に下がる

 こうした住宅選びの環境の変化によって、これまでのなんでも「東京はいいね」といったステレオタイプな価値観にも大きな変化が生じるだろう。人々が住宅選び以上に街を選ぶようになるからだ。同じ行政区にあっても、街の質を選ぶ時代になるのだ。

 つまり、夫婦が街の中にある保育所に子供を預け、街の中にあるコワーキング施設で夫婦会社は違っても、一緒に働き、先に終わったほうが子供を迎えに行き、買い物をする。街で遊び、街を楽しみ、街で寛ぐ。通勤がなくなるということは自分たちが住む「街」という生活ステージの選択が重要となるのだ。

 ××区だから「勝ち組」だとか、××区だから「微妙」とかいう価値観は希薄化し、街のブランドも変わってくるだろう。つまり現代人が必要とする機能を備えた街が新たなブランド街としての頭角を現す時代になるのだ。

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 都内にあっても街間競争に敗れた街は、空き家が増え、地価は大幅に下がるだろう。駅前というアドバンテージだけでは人を集められなくなる街も出現することだろう。これからの東京の不動産価格は「街間格差」に左右されることになるのだ。そしてこうした時代の到来は、人々の住宅環境に対する意識を高め、街の環境をよくするためのコミュニティの醸成に尽力する地域社会を作り出すことにつながるはずだ。ここに未来の東京の顔が見えてくる。

 そうした意味ではこれからの住宅を選ぶことになる若い東京人は幸せだ。これまで人生で稼ぐカネの多くを家という「ねぐら」につぎ込まざるをえなかったものが、自分を磨く別のものにも使えるようになるのだ。そのとき東京に住む人々の生活はきっともっと豊かなものになるはずだ。

2020年以降、不動産価格が上がる家、下がる家を分ける「街間格差」とは?

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