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『ラヂオの時間』は数え切れないくらい観ましたよ

——ラジオドラマは入社以来、毎年1本ペースで作っていたとか。

田中 ええ、過去に30本くらいは作っています。松山時代の夏目漱石といえば『坊っちゃん』ですけど、あの作品に出てくる教頭先生の「赤シャツ」って本当は人格者だったそうなんですね。そこに着想を得て、赤シャツの子孫が名誉回復を求めて漱石の子孫と法廷対決する『赤シャツの逆襲』ってドラマを作ったり。これは2017年、佐藤二朗さん主演でテレビドラマ化されました。

——ラジオドラマといえば三谷幸喜『ラヂオの時間』。

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田中 もうあの映画は数え切れないくらい何度も何度も観ましたよ。「ラジオドラマには夢がある」ってセリフがどこかにあるはずなんだけど、その言葉にいつも泣いちゃうんだよなあ(笑)。

©2019「ソローキンの見た桜」製作委員会

——ラジオドラマにそこまで思い入れがあるくらいですから、あるいは作家にもなりたかったのではないですか。

田中 そうですね、放送局に入らなかったら作家を目指していたかもしれない。でも一番なりたかったのはアナウンサーでしたから。

古舘くんはテレ朝のアナウンス試験で一緒でした

——早稲田のアナウンス研究会に所属されていたんですよね。

田中 入会したとき、吉田照美さんが3年生で「先生」でした。アナ研は3年生が1年生を教える文化だったんです。ただ、僕は本当は放送研究会に入りたかったんですよ。なぜならカメさんが放研だったから。でもちょうどあの頃は学生運動の時期で、放研の部屋を探し当てたもののロックアウトされていた。それでしょうがなく、アナ研に入ったんです。

——久米宏さんはアナ研?

田中 いえ違いますね。そして僕よりずっと先輩です。

——田中さんは古舘伊知郎さんと同年生まれですが、どこかで接点はありましたか? 古舘さんは立教大学でしたが。

田中 古舘くんはテレ朝のアナウンス試験で一緒でした。

 

——おお。覚えてますか。

田中 だって、受験生全員が目をむくような架空実況を披露したんだもん。あれは忘れられない。その場でお題を振られて架空実況する試験があったんですね。それが控え室にも聞こえてくるんですよ。古舘くんはプロレスを振られたんですけど、ただただ「何なんだ、こいつ……」って思うしかなかった。技は次から次へと出てくるし、とにかくその後の「古舘節」そのものですよ。

——圧倒的ですね。

田中 テレ朝のアナウンサーになった古舘さんとは、それっきり会うことはなかったけれども、天才っているんだなあって思いましたね。