タバコが原因のがんは10種類! 肺、肝臓、膵臓、それから……
まず、がんです。厚生労働省の「喫煙の健康影響に関する検討会」の報告書「喫煙と健康」(平成28年8月)によると、「科学的証拠は、因果関係を推定するのに十分である(レベル1)」とされたがんは、「肺」「口腔・咽頭(口とのど)」「喉頭(声帯のあるところ)」「鼻腔・副鼻腔(鼻とその奥の空間)」「食道」「胃」「肝」「膵」「膀胱」「子宮頸部(子宮の出口)」の10種に及びました。
肺や口の中、のど、鼻など、タバコの煙が入る場所にがんができやすくなるのは、なんとなく想像がつくかもしれません。しかし、タバコはそこにとどまらず、煙が届かないように思える食道や胃、もっと遠くの肝臓、膵臓、膀胱、子宮頸部にまで悪影響を及ぼすことがわかっているのです。
「歯周病」のリスクも上がる
さらに、タバコはがん以外の病気のリスクも上げてしまいます。厚労省の同じ報告書によると、循環器疾患では「虚血性心疾患(心筋梗塞など)」「脳卒中」「腹部大動脈瘤」「末梢動脈硬化症」、呼吸器疾患では前出の「COPD」に加え「呼吸機能低下」および「結核死亡」、妊婦(本人喫煙)では「早産」「低出生体重・胎児発達遅延」および「乳幼児突然死症候群(SIDS)」がレベル1とされています。
また、意外なところでは、主に生活習慣によって起こる「2型糖尿病」や「歯周病」などもレベル1、つまりタバコを吸っているとリスクが上がると報告されています。
なぜ、タバコを吸うと心筋梗塞や脳卒中のリスクが上がるのでしょうか。それは、タバコの煙に含まれるニコチンの作用で血管が収縮して血流が悪くなり、血圧や脈拍も上昇するからです。さらに、煙に含まれる一酸化炭素が赤血球(ヘモグロビン)に結合し、酸素が不足。これらが相まって動脈硬化が進むと考えられています。
タバコを1日に25~49本吸っている人は、心筋梗塞で死亡するリスクが吸わない人に比べて約2倍になります。心疾患は、がんに次いで日本人の死因第2位。脳卒中(脳血管疾患)は第3位です。タバコはがんに加え、血管の病気のリスクも上げてしまうのです(国立循環器病研究センター/循環器病情報サービス/まだ タバコを吸っているあなたへ)。
また、タバコを吸うと、血糖を筋肉に取り込む働きをするホルモン「インスリン」の働きが悪くなる「インスリン抵抗性」が高くなり、血糖値が下がりにくくなることもわかっています。糖尿病になると高血糖状態が続くことで血管が傷つきやすくなり、動脈硬化が進みますから、タバコを吸っているとますます心筋梗塞や脳卒中のリスクが上がります。
ちなみに、糖尿病になると歯周病になりやすくなることが知られていますが、近年は歯周病が糖尿病や心筋梗塞のリスクを上げるとも言われるようになりました。歯周病菌が腫れた歯肉から血管に侵入し、その毒素が全身に悪影響を及ぼすからだと考えられています(日本臨床歯周病学会/歯周病が全身に及ぼす影響/狭心症・心筋梗塞)。