昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「国境の壁」でアメリカ政府が機能停止 トランプ大統領の致命的失態とは

政府職員80万人に影響。トランプ氏は二つの「落とし穴」に陥っていた

2019/01/19

自ら「閉鎖する」と言った大統領

 しかし、トランプ大統領は国境の地形に対応した、そうした細かい政策に関心がなく、57億ドル(約6000億円)を充て、背の高い壁を建設して、「公約履行」を夢見ているようだ。

 そんなトランプ大統領の心理にうまく付け込んだのが民主党指導部だったようだ。

 中間選挙終了後の12月11日、上下両院の指導者、ナンシー・ペロシ次期下院議長とチャック・シューマー上院院内総務をホワイトハウスに招き、議会運営などについて話し合った時のことである。

 トランプ大統領は、「これまでたくさんの壁が建設されてきた。既存のフェンスの補修も行われてきた。それについては話をしない」と現状に応じた政策論議を自ら放棄、問題は「新規の壁建設」だと主張した。

 ペロシ氏が「『トランプ・シャットダウン(政府機能閉鎖)』をしてはならない」と刺激的な発言で大統領に「ジャブ攻撃」すると、大統領は「それは『ペロシ・シャットダウン』と呼ぶ」と応じた。

12月11日、ホワイトハウスでトランプ大統領、ペンス副大統領(中央左)と話し合ったナンシー・ペロシ次期下院議長(左)とチャック・シューマー上院院内総務(右) ©getty

民主党が仕掛けた罠に乗ってしまった

 そんなやりとりを繰り返したあと、シューマー上院院内総務が「あなたは『シャットダウンしたい』と言っている。われわれはしたくない」と当時の論議に言及すると、最後にトランプ氏は、「私は誇りを持って国境の安全のためにシャットダウンをする」と宣言し、「シャットダウン」を2回繰り返した。

 こうした論争は、自ら「閉鎖する」と言った方が負け。大統領は、民主党が仕掛けた罠に乗ってしまったのだ。明らかにこれで勝負があった。この映像は繰り返しテレビで放映された。

大統領との面談後、「政府機能停止」について会見するペロシ氏(右)とシューマー氏(左) ©getty

 年が明けて、政府機能の閉鎖が続き、世論調査が行われると、「閉鎖はトランプ大統領の責任」と答えた人はいずれの調査でも50%を超えた。CNNテレビは55%(「民主党の責任」は32%)、ワシントン・ポスト紙/ABCテレビの合同調査で53%(同29%)と大統領の責任を問う声が圧倒的だった。

 トランプ大統領が、効果的な国境管理について話し合う姿勢を見せていれば、まったく違った結果が出ただろう。

 トランプ氏が再選をかける大統領選挙の前年は、こうして大統領自らが躓いて明けた。

この記事の写真(5枚)

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー