トランプ米大統領が求めるメキシコ国境の「壁」建設予算をめぐる紛糾で、米政府機能の一部閉鎖が続いている。だが、その裏側には、知られざる「壁」の現実や、大統領の暴走の実態が隠されていた。
国境は今や個人の犠牲で管理されている
一部の政府機能停止で、給与が支払われない政府職員は約80万人。しかし、このうち国境管理に当たる国土安全保障省職員や航空管制、食品衛生監視員ら約40万人は無給で出勤させられているのが現実だ。
大統領は「麻薬密輸」や「テロリストの侵入」を防ぐ、と壁の建設を主張するが、国境は今や個人の犠牲で管理されているのだ。
実はトランプ氏は、自分が二つの落とし穴に陥っていたことが分かっていなかった。
第一に、壁の「公約」そのものは選挙の「スローガン」に過ぎなかったが、建設できると大統領が思い込んでいた。
第二に、野党民主党が仕掛けた「罠」にはまり、自ら「政府機能の閉鎖」を宣言してしまったことだ。
良識派の高官を次々辞めさせてしまった大統領の暴走は、もはやとどまるところを知らない。
Earlier this evening, President @realDonaldTrump treated the Clemson Tigers football team to dinner in the State Dining Room! #ALLIN pic.twitter.com/P5JAo6yzfR
— The White House (@WhiteHouse) 2019年1月15日
スローガンを政策と取り違え
トランプ氏の大統領選出馬に先立ち、側近の選挙コンサルタントたちは、国民の耳に入りやすい言葉を工夫した。
出馬の検討を始めた2014年、トランプ氏が白人層の支持を得るために考えたのは、移民の制限だった。そこで、巧みな選挙技術でトランプ陣営の「トリックスター(ペテン師)」と呼ばれる側近のロジャー・ストーン氏らが、受けやすいスローガンとして考え出したのが、「国境の壁の建設」だった。
「壁」を建設して「メキシコに費用を払わせる」という大胆な発言が人気を集めた。トランプ氏の「メキシコに払わせる」発言はワシントン・ポスト紙の集計だと計212回に上ったが、本人は今、その発言も否定している。
トランプ氏は共和党の指名を得て、本選挙に臨み、ヒラリー・クリントン元国務長官とのテレビ討論でも「壁」の建設を主張。メキシコ大統領は「費用を払わない」と拒否したが、構わず「壁」を繰り返した。大統領就任後も同じだった。