ケーブルをつなぐことなく、上に置くだけでスマホを充電できるワイヤレス充電が、ここのところ普及の兆しを見せています。数年前にドコモの製品が「おくだけ充電」として採用した時は尻すぼみに終わってしまいましたが、iPhone 8で機能が組み込まれたことで、状況が一変して現在に至ります。古くて新しい規格、といったところでしょうか。
ワイヤレス充電は、対応機器であれば、iPhoneでもAndroidでも、またそれ以外のデバイスでも充電器を共有できる、互換性の高さが大きなメリットです。もっとも、それぞれのデバイスによって必要な電力が異なり、それを間違えると急速充電ができなかったりと、注意すべき点もいくつかあります。
今回は、ワイヤレス給電の国際標準規格で、iPhoneなど多くの機種が対応する「Qi(チー)」規格のワイヤレス充電器の選び方について、シェアトップのメーカーであるアンカー・ジャパン(Anker)の猿渡さんにアドバイスをもらいつつ、そのポイントを紹介します。
(1)まずは出力をチェック
ワイヤレス充電器を選ぶ際にまずチェックすべきなのは、なんといっても出力です。例えばiPhoneであれば「7.5W」、一部のAndroidは「10W」といった具合に、急速充電を行うのに必要なW(ワット)数が決まっています。
充電器がこの電力を供給できなければ、もっと低いW数、例えば5Wで充電することになり、そのぶん余計に時間がかかってしまいます。よって何よりも先に、出力で候補製品を絞り込む必要があるというわけです。
「ただし」と注釈をつけるのが猿渡さんです。「寝ている間に充電するのなら、5Wでも7.5Wでも、また10Wでも、朝までには問題なく充電が完了するので、あまり関係はありません。これが外出先で使用するモバイルバッテリーであれば、少しでも早く充電できたほうがいいのですが、充電時間をしっかりとれる環境でのワイヤレス充電ならばそこまでこだわる必要はないですね」
なるほど、たしかにそうでしょう。もしワイヤレス充電器を2台所有していて、一方が高速、もう一方が低速であるならば、デスクやテーブルで使うのは高速なモデル、就寝時に枕元に置いて使うのは低速なモデルといった具合に、使い分けるのがよいかもしれません。
「ワット数が大きい=高速充電」のワナ
ちなみに猿渡さんによると「まずは自分が持っている機器が最大どのぐらいの出力に対応しているかを把握しましょう」とのこと。「例えばiPhoneなら7.5W、Galaxyなら10W。最近の機種だと、新しいXperiaのように15Wに対応するスマホも出てきていますね」
もっとも、ワット数が大きいからと言って、必ずしも高速でない場合もある、というのが難しいところです。どういうことでしょうか。
「15Wは理論値では5Wより3倍速いんですが、ワイヤレスは熱がこもりやすいため、温度が上がりすぎるとセンサーが検知して一旦充電が止まったりすることもあるんですね。そのため、5Wであれば充電が継続されるところ、15Wだと止まったり再開されたりで、製品によってはトータルではそこまで(所要時間に)明らかな差がつかなかったりするケースもあります」(猿渡さん)