正攻法でカネを作ろうとしても
Amazon創業者が離婚で何兆円も資金を奥さんに支払う一方、オバマ政権を副大統領で支えたバイデンさんは奥さんの病気が理由で資産を売らなければならなくなったりするのも世の中だということです。役員報酬として億を超えることはないが、ストックオプションなり何なり正攻法でカネを作ろうとしても、なかなかむつかしいわけですよ。
なので、やっぱりみんなおカネが欲しくてセコいことをやるんです。上場企業で活躍する割に創業者利益を得られない人たちは、たいていにおいて自社の周辺にVC(ベンチャーキャピタル)部門を作り、周りの息のかかったベンチャー企業を買収させるなどして、セコく会社のカネを自分の懐に入れようとします。監査法人も同業他社も何となく気づいているけどいちいち指摘しないのは、それに文句をつけ始めたらいろんな人たちに延焼するので黙っているわけです。誰かを告発すると芋づる的にあいつもこいつもとなりかねませんし、自分自身もそういう収益を上げる日が来るかもしれませんからね。
ベンチャー企業の集まりを企画したり、VC同士でつるんで上場ゴロのような真似をするのも、彼らの飯のタネというのが普通に働いて役員報酬を貰うことではなく、上場しそうな会社の株式を分けてもらい、その会社に自分の事業から売り上げをつけてあげたり、同業他社の横のつながりでうまいことをやることのほうが利幅が大きいからなんでしょう。
どうしても雇われる側というのは軽視されがち
それを国際的なマネーロンダリング的手法で大々的にやってしまったのがゴーン前会長であり、特別背任だけではなく税法上の問題も当然指摘され、名経営者としての名声も、世界のルノーグループ会長の座も失ってしまいました。やったことの悪質さを考えてもそれ相応の貢献もあったわけですし、釈明の余地や有罪無罪どうであれ、もうちょっと良い花道のあり方もあったんじゃないかとは思います。
当初はフランス政府もゴーン前会長を庇うのかなと思ったら、実は税額の高いフランスで所得を計上せず収入や資産を逃避させやすいオランダで納税していたことが発覚すると、フランス人をして「ゴーン前会長? あれはレバノン人だから」と見切られてしまうわけであります。
そういうビッグビジネスの世界において、どうしても雇われる側というのは軽視されがちで、一時期は蝶よ花よと持て囃された企業で抜群の収益性、素晴らしい福利厚生、驚くべき高給待遇を勝ち取ってきたはずの社員が、企業業績の悪化とともに手厚かった住宅手当を切られ、理念だけ先走ったようなポエムがオフィスの壁に貼られ、いつから運動部になったのかというような体育会系的な組織の締め付けが行われて、コストダウンのためのマネジメントが強化され窮屈になっていきます。儲かっているときに社員を甘やかす会社は、儲からなくなるとまず社員の労働環境をシメることでコストダウンを図り始めるのは常識と言えます。