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実体のないイメージと彫刻のあいだはすべて「写真」だ
さらにいえば、高木こずえの認識では、実体のない単なるイメージ(たとえば誰かの頭の中にのみあるような)と、立体の物体である彫刻を両極とし、そのあいだにあって世界を複製するものなら、なんでも写真とみなせるのだとか。ということは、平面上でなんらかの対象の姿を写している絵や版画は、写真の一種に他ならないこととなる。
まあ、呼び名は何であろうと、観る側にとってさして影響はない。アートをカテゴリー分けして安心しようとするのは、学歴や職業、肩書きばかりを見て人を区別するような行為に似て、あまり生産的じゃない。
この作品が何と呼ばれようとも、会場にある絵画が発する色合いは、他では出会えない鮮やかさと透明感を持って輝いている。彫りも摺りもアーティストみずから手がけた木版画の一つずつの線は伸び伸びとして、じっと見ているとひとかけらずつが、かすかにうごめいているんじゃないかと見えるほどの生命感がある。
華やかさに満ちた作品群の中に、身を浸してしばしの時間を過ごしてみたい。