コブクロやいきものがかりともコラボ
だが、吉岡はこの発言の直後、2010年5月に死去。吉岡夫人から「もうパパの新しい作品は生まれないのよ」と言われた石川は、これからは自分で新しい出会いをつくっていかなくてはいけないと痛感したという(※4)。ここから生まれたのが、さまざまなアーティストたちと組んだコラボレーションアルバム『X -Cross-』である。同作には奥田民生やくるりの岸田繁などが参加し、2014年には第2弾となる『X -CrossⅡ-』もリリースされた。『X -Cross Ⅱ-』からシングルカットもされた椎名林檎との共作「暗夜の心中立て」は、前年の紅白歌合戦で一緒になった椎名に石川が舞台袖で直々に声をかけて実現したという(※4)。
2015年に放送された『ルパン三世』のテレビアニメ第4シリーズのエンディングテーマ「ちゃんと言わなきゃ愛さない」(つんく作詞、大野雄二作曲)も、意表を突く起用だった。2017年には『X -Cross Ⅲ-』をリリース、コブクロの小渕健太郎のほか、矢野顕子や大江千里などとコラボレーションした。昨年も、いきものがかりの水野良樹と組んでシングル「花が咲いている」をリリースしたことが記憶に新しい。
ここへ来て、ベテランから中堅・若手までポップスのアーティストとの仕事はますます増えつつある。正月の矢野顕子とのテレビでの共演もその延長線上にあるといえる。思えば、矢野もまた、オリジナルの楽曲だけでなく、童話や民謡をカバーしても、すべて自らの色に染めてしまう。そんな彼女と石川さゆりの気が合うのは当然といえば当然だろう。
※1 『週刊現代』2012年6月9日号
※2 『婦人公論』2010年7月22日号
※3 『潮』2007年6月号
※4 『婦人公論』2014年8月22日号