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「なんとかなる」「仕方ない」……母リョウコの人生を楽しくさせた魔法の言葉

漫画家・ヤマザキマリインタビュー #1

2019/02/08
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3つの魔法の言葉で毅然と前へ

 山あり谷ありの人生の中で、喜びも悲しみも味わい尽くしたリョウコの口癖は「なんとかなる」「仕方ない」「素晴らしい」だ。辛いことがあった時に落ち込んで泥沼にはまって恨む人になるのか、「ま、仕方ないか」でそこからサクッと脱出するか。大変なことが起きた時に、開き直って「なんとかなるわよ」と前を向けるか。今日の夕陽はきれいだとか、小さいことに感動して「素晴らしいじゃない!」と、今日この時を生きていることを謳歌できるか。この3つの言葉は、「何があっても最後はうまくいくはず」と思わせてくれるリョウコの魔法の言葉だ。かつて私が留学先のイタリアからシングルマザーになって子供を連れ帰った時も、「仕方ないね!! 孫の代まではアタシの責任だ!!」と、リョウコは怒るどころかなぜかちょっと楽しそうだった。呆れたり泣いたり笑ったりしつつも、毅然と前へ進む。それが私にとっての、リョウコの“母親らしさ”だった。

(全2回の1回目/#2は2月15日 金曜日公開)

ヤマザキマリ/1967年東京都生まれ、北海道育ち。84年に17歳でイタリアに渡り、フィレンツェの美術学校で油絵と美術史を学ぶ。97年漫画家デビュー。その後、イタリア人の比較文化研究者との結婚を機に、シリア、ポルトガル、シカゴへ移住。現在は日本と北イタリアで暮らす。2010年に『テルマエ・ロマエ』(エンターブレイン)で第3回マンガ大賞、第14回手塚治虫文化賞短編賞を、15年に芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。17年にイタリア共和国星勲章コメンダトーレ綬章。著書に『スティーブ・ジョブズ』(講談社)、『プリニウス』(とり・みきと共作/新潮社)、『オリンピア・キュクロス』(集英社)、『男性論 ECCE HOMO』(文春新書)、『国境のない生き方』『仕事にしばられない生き方』(小学館新書)など多数。

ヴィオラ母さん 私を育てた破天荒な母・リョウコ

ヤマザキマリ

文藝春秋

2019年1月30日 発売

「なんとかなる」「仕方ない」……母リョウコの人生を楽しくさせた魔法の言葉

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