死を感じられる現実を生きられるというのは、ありがたいものですね
がんになったことで、人生観も変わりました。がんにならなければ、心のありようが収まらなかったかもしれません。“人はかならず終わる”という実感を自分の中に持てたことは大きかったです。命の限りを実感できてよかったのは、心の整理ができること。がんという病気は、たいていいくらか残された時間があって、その用意が間に合うんですよ。
わたしは自分のことで人を煩わせるのがすごく嫌なんです。自分のことを自分で始末していくのは大人としての責任だと思うから。死を感じられる現実を生きられるというのは、ありがたいものですね。いつ死んでも悔いがないように生きたい。そう思っています。
(「表紙の人 樹木希林」2015年7月)
がんという病気というのは、これは貴重ですよ
以前は気に入らないと相手を全面否定してましたね。人間というのは、自分というのは、そんなに立派なものじゃない、と分かったら愕然(がくぜん)として。他人を全面否定なんてできるわけがないのに、なかなか分からずに、よくもまぁこうやって生きながらえてきたなぁと思って。
だから、死のない病気だったらまだやってたと思うんですけど。死というものがものすごく間近に、ちゃんとここにある。がんという病気というのは、これは貴重ですよ。治るようにもなってきてるから、そういうふうにあんまり言えないけど。今世紀に必要とされる病気なんじゃないですかね、人間にとって。そんなふうに受け止めているんです。だからそれで、別に不幸だと思わない。ていうのが、だいたい、私の物の考え方なの。そうすると楽ですよ~。あんまりないの、辛(つら)いことが。
(「嘘のない人生を生きたいと思う、だからいま、こんな夫婦です。」2009年1月)