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与党のクレームから発覚した、不正世論操作事件

「ドルイドキング」事件が明るみに出たのは昨年3月。6月の地方統一選挙を控えての頃だ。

 事件の発端は、ちょうど1年前、平昌冬季オリンピックに遡る。

 当時、北朝鮮の平昌冬季オリンピック参加表明に色めき立った文政権は、南北合同の目玉としてアイスホッケー女子チームを南北合同チームにすることを発表した。しかし、これに長年オリンピックを目指して練習を積んできた選手やその同世代である若い世代から反発の声が上がった。韓国の大手ポータルサイトでは、懸命に練習してきた韓国選手から出場する機会を奪った文政権を批判する書き込みが掲載され、その書き込みへ共感を表すクリック数が急増したが、与党側はこれは不正に操作されたことによる急増だとして警察庁に告発。捜査が始まった。

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 しかし、まさかやぶへびになろうとは。

 捜査の末、昨年3月末に逮捕されたのは、なんと与党党員の金ドンウォン氏だった。彼は、前述のように韓国では有名な時事ブロガー「ドルイドキング」として知られた人物で、金慶洙知事との関係も発覚した。

 金慶洙知事は一貫して金氏との関係を否定していたが、実際はセキュリティ付きのメッセンジャープログラム「テレグラム」を通じてメッセージを交換していたとされ、2017年5月の大統領選挙直前まで、文大統領や与党に有利になるようネットの書き込みを操作することを承認し、認めていたといわれている。 

 また、 裁判では金慶洙知事が金氏にこうしたネット上での不正な世論操作の代償として駐大阪大韓民国領事館の総領事職を提案し、それがうまくいかなかったため、次に仙台の総領事職を提案したとされている。

 金慶洙知事はこれらすべてを否定している。金氏は金慶洙知事と同じ日に懲役3年6カ月の実刑判決を受けている。

与党は「司法の報復」と主張するが……

 与党側は、判決を下した裁判官がヤン・スンテ前長官の秘書室に勤務していたことなどを「司法の報復」の根拠としているが、担当裁判官はヤン前長官とは仕事上での深い関わりはなく、昨年7月に朴槿恵前大統領に特殊活動費を受け取ったことが認められるとして懲役8年を言い渡した際は、与党は、「司法の正義」と賛辞を送ってもいた。

「キャンドルデモによって誕生したといわれる文大統領、そして与党だったからこそ期待も大きかったが、結局、デモを利用した権力の亡者に過ぎなかった。どこに正義があるのか、ほとほと疲れてしまって、支持する政党も見当たりません」(冒頭の会社員)

 政治に“正義”を求めるというのもあまりにも浪漫的にはすぎるが……。

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 昨年10月30日の元徴用工の判決についても国際法が上という原則を守るべき、という声もちらりほらり出てきた韓国。

 一方、支持率低迷で彷徨っていた野党第一党の自由韓国党は金慶洙知事の実刑の報にお祭り騒ぎで、文大統領は自身が候補だった当時、ネットでの不正な世論操作に関する報告を受けていたのか明らかにすべしと声を上げている。

 それにしても、10・30の元徴用工の判決では「司法を尊重する」と言っていたのが、身内の不都合にはいとも簡単に立場を翻して「司法糾弾」とはいくらなんでもダブルスタンダードが酷すぎる。

 このダブルスタンダードが、元徴用工判決を巡る韓国政府の立場にどんな影響を与えるのか、2月は日韓にとって波乱の月になりそうだ。