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なぜ境港が外国人観光客の玄関口になれたのか

 2つ目の理由は、島根県と鳥取県の境目にある境港(境港市)という街の存在である。西側は中海を通して島根県に接し、東側は日本海に面する、人口約3万4千人の小さな港町である。だがここは今、遠い海の向こうからやってくる大量の外国人観光客の玄関口になっているのだ。

 境港管理組合によれば、境港に寄港するクルーズ客船の数は昨年で37隻。クルーズ客船でも大型といわれる総トン数10万トン超の船は、このうち13隻も寄港している。日本を代表するクルーズ船といえば飛鳥IIだが、この船で総トン数が約5万トンだから、飛鳥の倍以上の規模を持つクルーズ船が続々境港にやってきているということになる。

境港で大型クルーズ客船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客と記念写真に納まる着ぐるみの鬼太郎ら ©共同通信社

 なぜ日本人に馴染みのない境港が寄港地に選ばれているかというと、それには理由がある。実は近年大型化している豪華客船は、寄港地の水深が10~12メートルないと接岸できない。境港の水深は14メートル。豪華客船に対応できる日本有数の「水深が深い港」なのだ。

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 クルーズ船から境港に降り立った外国人観光客は「水木しげるロード」に整備された商店街で特産のカニや干物を買う。彼らは1回の寄港で、1人当たりおおむね3万円から4万円の買い物をする。昨年3回寄港した大型客船、オペレーション・オブ・ザ・シーズ(168,666トン)クラスになると乗客定員数は優に4000名を超える。つまり、地元では一度の寄港、上陸で1億円を超える経済効果が期待できることになる。彼らは現地で宿泊はせず、船は翌日には岸を離れるが、街にとってはあたかも宝船がやってくるようなものだろう。

特産のカニ ©文藝春秋

外国人観光客は前年度比40%増 

 外国人に人気の鳥取県、実際に観光データでもこの傾向ははっきりと表れている。県の調査によれば、平成29年の観光客入り込み数は実人数ベースで923万人。この数値は前年比で89万7000人、8.9%の減少を記録している。いっぽうで外国人の延べ宿泊者数は14万人、前年が10万人だから、なんとたった1年で4万人、40%もの高い伸びを示したことになる。たしかに日本人の間では不人気が継続しているいっぽうで、外国人人気はうなぎのぼりと言えるのだ。

 国別ではどうだろうか。地理的な近さも相まって韓国が全体の4割近くとなる39.6%。香港22.0%、台湾12.9%。東アジア3か国(・地域)で75%程度を占める。