つまらない記事を書いても「体調悪かったのかな」と思われる関係
――携帯からスマホに切り替わって、読まれかたは随分変わりましたか?
SNSから記事に直接飛んでくる人が増えて、デイリーポータルZのトップ画面から読む人は減りました。もともと「昼休みに読むサイト」として作っていたので、更新は11時、PVのピークは12時台に来ていたんですが、今は8時台、18~19時台のアクセスも多いですね。通勤時間帯だとさすがに7割はスマホユーザーですけど、デイリーはなぜかPCからのアクセスが多いサイトで、今でもPCの方が多いんですよ。変わったサイトなんですよね。
――それでも3割は通勤時間帯にPCで見ているんですね。
仕事をサボっているんでしょうね。
――デイリーのファンを増やす工夫はされていますか?
あんまりしていないんですけど、やたらとリアルのイベントはやっていますね。ライターがスライド発表したりとか、出店で何かを配ったりとか。なんでやるかというと、僕らがチヤホヤされて嬉しいからなんです。
読者もライターに会ったら、たぶん嫌いにはならないんじゃないかな、と。「林ってイヤな奴だな。最悪だった」って、相当なことをしないと思われないですよね。会えば、なあなあの関係に一歩近づけるかなと思うんです。つまらない記事を書いても「体調悪かったのかな」とかえって心配までしてくれるかも知れないし。
――有料の「デイリーポータルZ友の会」もありますね。
お金になるかなと思ったんですが、ぜんぜん収益にならなかったですね(笑)。月300円で会員限定サイトが読めてメルマガが届く、月1000円コースは毎月おみやげやグッズが届くんですけど、1000円のものを送ったりするから全然儲からない。送料込みだとむしろ損だけど、まあ話題になればいいかなって。
――ふるさと納税みたいですね。
あっ、ふるさと納税だと思えばいいですね。Tシャツも作ったんですけど、送料込みで1400円かかってて、大損じゃないか!って(笑)。ソーマトロープになってて、素早く回転すれば目の錯覚で鳥が鳥かごに入るはずなんですけど、全然入らないんです。(友の会グッズ「ソーマトロープTシャツ」の紹介)あと、ニフティで大量に余ってたタブレット端末をプレゼントしたら、読者から「盗品か?」ってメールが届いたり。盗品送るわけないだろって思うんですけど(笑)。結局は広告モデルになっちゃうんですよね。個人からいただくのが一番いいんですけどねえ。
――月500万円コースとかあったら案外入る人もいそうな気がします。
500万ならサイト名を好きに変えてもらっていいです。ネーミングライツです(笑)。
はやし・ゆうじ 1971年生まれ。ニフティ株式会社勤務。2002年に「デイリーポータルZ」を立ち上げ、現在「デイリーポータルZ」ウェブマスター。東京都出身。 編著書に『死ぬかと思った』(アスペクト)など。
写真=榎本麻美/文藝春秋