「おもしろ系」メディアのトップランナー「デイリーポータルZ」。今回は編集長の林雄司さんに、「どうやって稼いでるんですか」的な、ちょっと真面目な「お金の話」を聞いてみました。でも結局、面白い話になっちゃいました。
――PVはあまり気にしていないのですか?
デイリーは記事広告はやっていますけど、バナー広告はやっていないので、PVがそのままお金になるモデルになっていないんですよ。1PV=◯円みたいなモデルのバイラルメディアなんかはそうも言っていられないんでしょうけど、デイリーは記事広告が入ればいいので、広告を打ちたいと思わせるようなステキな感じがないといけない(笑)。
――記事広告はいつごろから?
2008年からです。当初はなかなか広告を取れなくて苦戦しました。広告は、けっこう手間のかかるやり方で作っていますね。広告営業は別働隊ですが、記事そのものは編集部で作ってます。代理店やクライアントのところに行ってNGラインを聞いて、企画をいくつか提案し、選んでもらって制作にかかる、というやり方です。
クライアントのNGラインはけっこう厳しくて、商品そのものをいじることができないことも多いです。あくまでもカタログに載っている情報だけでおもしろい記事を作るにはどうしたらいいだろうと悩んで、「製品の機能への感動をチアリーダーのポンポンで表現する」だけの記事を作ったことも(笑)。「この感動をポンポンの文字で伝えたい」
――条件が合わずに広告を断ったケースも?
掲載時期と制作期間がどうしても合わないこともありますし、ギャンブル系のものなどはお断りしていますね。結婚相談所からのオファーもお断りしたことがありました。デイリーで「結婚しなきゃ」とか、焦らせるのは嫌だなあと。「結婚しなくてもいいぞー」ならデイリーのイメージとぴったり合うんですけど。
――読んで「結婚したい!」と思わせる記事は……
一切ないですね!
――ライターさんとのやり取りはどのようにされていますか?
原稿をもらったときには、担当者から必ずコメントを入れるようにしています。かいつまんで言うと、おおむね「おもしろかったです!」というコメントです(笑)。
――あまりダメ出しはされないんですか?
えーと……ちょっとします。大まかには褒めてから、「ここはこうしたほうがいいんじゃないですか?」とは。でも、文章がわかりにくい、構成がわかりにくい以外はあまり言いません。
ちょっと「言い過ぎちゃっている」ときは直しをお願いしますね。たとえば地方に行くと、ヘンなオブジェが置いてある妙な喫茶店とかあるじゃないですか。それをただ「おかしい」と書いちゃうと、意地悪な感じがしちゃうんですよね。貶めているような。読者が読みながらツッコむのを先取りしちゃっている気もしますし。
あと、あまり勇ましすぎるのも書き直してもらったりしますね。シューマイのことを調べる記事で、取材中に警官に職務質問されたライターさんがいて、初稿では「職権濫用だ!」みたいに冗談めかして書かれていたんですけど、「『◯◯◯(※某誌)』みたいだからやめましょー」と表現を変えてもらったことがありました。僕も職務質問とかされるとすごくイヤだし腹立つんですけど、「シューマイの匂いにつられて来ちゃったのかなー」くらいにしておきたいんです。反権力にするよりも、話の腰を折るような姿勢で戦いたい(笑)。